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[ティラナ 11日 ロイター] - トランプ米大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏が南東欧アルバニアで進める数十億ドル規模の大型リゾート計画を巡り、マイアミ在住の実業家が開発用地の土地権利証書を偽造した疑いがあることが分かった。ロイターがアルバニアの組織犯罪対策機関の事件記録を確認した。

このリゾート開発を巡っては以前から、アルバニア国民の反発を招いている。開発用地の所有権そのものを巡る訴訟が10年以上にわたって続いているほか、計画地周辺には野生生物が生息する湿地帯が広がり、自然環境への影響も懸念されている。

渦中の実業家アルトゥル・シェフ容疑者は現在、麻薬密売とマネーロンダリング(資金洗浄)の疑いでアルバニア当局に指名手配されている。事件記録によると、シェフ容疑者とその関係者が南米産コカインを欧州の港に密輸し、その収益を偽造された土地所有書類などを使って不動産事業に投じて、資金洗浄を行った疑いがある。

シェフ容疑者は自身に対する全ての疑惑を否定。同容疑者の弁護士であるクイティム・ツァクラニ氏は、アルバニア検察が麻薬組織の資金洗浄に関与した疑いでシェフ容疑者の逮捕状を出していることを認めた。

「シェフ氏の人物像に関する主張は、いずれも事実ではない。彼は麻薬密売人でもなければ、不動産文書の偽造もしていない」とツァクラニ氏は述べ、「シェフ氏はアルバニア検察の主張を把握しているが、事実は検察の言い分とは全く異なり、自身は疑惑と無関係だとの立場だ」と説明した。

米司法省の報道官は、アルバニア側からマイアミ在住のシェフ容疑者の所在確認や身柄拘束を求める要請を受けたかどうかについて、コメントを控えた。

シェフ容疑者は今年4月、リゾート建設予定地となっているアルバニア海岸沿いの未開発地を「アルバニア・ランド・デベロップメント(ALD)」に売却した。ALDは、クシュナー氏が支援する事業の開発業者「サザン・リアル・エステート・デベロップメント」や、その他の投資家が所有している。

アルバニア検察は事件記録の中で「証拠に基づき、前述の資産が偽造書類を用いて取得されたという合理的な疑いがある」と指摘した。

事件記録では、クシュナー氏やサザン、ALD、その他のリゾート計画出資者による不正行為は指摘されていない。ロイターも、投資家らがシェフ容疑者から土地を購入した時点で、同容疑者への疑惑を把握していたことを示す証拠は確認していない。

サザンの広報担当者はロイターの取材に対し、シェフ容疑者への疑惑には触れず、土地取得は合法的なものだったと考えていると述べた。ALDはコメントの要請に応じなかった。

クシュナー氏の広報担当者は、本件についてコメントを控えた。サザンはクシュナー氏が同事業に出資していることを認めているが、同氏の具体的な役割や出資額は公表していない。

<未開発の土地巡り論争続くリゾート開発>

権利証書の偽造疑惑は、論争を呼ぶリゾート開発に新たな課題を突き付けている。同事業は、野生生物を脅かすとの懸念から、既に地元住民らによる大規模な抗議に直面している。

建設予定地に近い南部ズベルネツ村の住民らは10年以上にわたり、同地に対するシェフ容疑者の所有権主張に異議を唱え、法廷で争ってきた。

十数人の住民は6月、ロイターに対し、自分たちが土地の正当な所有者である証拠だとする権利証書や税務記録を提示した。住民側の弁護士コスタンディン・ベコ氏は、訴訟は継続中で、リゾート計画の差し止めを裁判所に求める方針だと述べた。

かつて欧州で最も貧しく、国際的に孤立した国の一つだったアルバニアだが、アドリア海沿岸には、欧州でも数少ない未開発の海岸線が残る。その場所で今、建設ブームが起きている。

クシュナー氏が支援するリゾート計画は、手付かずの砂浜や森林、ウミガメやフラミンゴが生息する湿地帯が広がる一帯で進められている。フラミンゴは開発反対派の象徴となっており、国内では「フラミンゴ革命」と称する大規模な抗議活動に発展。一部では首相の退陣を求める声も上がっている。

トランプ氏の長女でクシュナー氏の妻、イバンカ・トランプ氏は、数年前に夫妻でヨットからこの海岸を見たことが、リゾート構想のきっかけだったと語っている。

クシュナー氏は24年、ホテルなどの宿泊施設やプール、ヨット用の桟橋が建ち並ぶ完成予想図を添えて、リゾート計画を交流サイト(SNS)上で発表した。ただ、同氏の出資額は公表されていない。

アルバニア政府は計画を強く後押しし、抗議は反政府勢力によるものだと主張している。同国のラマ首相はロイターの取材で6月、同計画は「美しい」事業であり、最終的には進められることになるだろうと述べた。

シェフ容疑者に関する事件記録上の疑惑についてアルバニア政府報道官は、政府は民間取引には介入しないとしたうえで、計画は同国および欧州連合(EU)の法律に従って進められていると説明した。

EU側は以前、加盟候補国であるアルバニアに対し、この事業に関してEUの環境規則を順守するよう求めた。欧州委員会の報道官は今回、追加のコメントを出していない。

<検察が捜査に乗り出す>

シェフ容疑者に関する事件記録は、アルバニアの汚職・組織犯罪対策特別検察庁(SPAK)が作成した。通常の警察・検察組織から独立した捜査官と検察官で構成され、汚職対策を進めるため19年に設立された機関だ。

200ページに及ぶこの事件記録は公開されていない。SPAKの報道官はロイターの取材に対し、同機関がこの問題を捜査していることは認めたが、それ以上のコメントは避けた。

書類の日付は26年6月12日。SPAKはこの日、麻薬密売とその収益の資金洗浄に関与したとして、20人に対する逮捕状を出したと発表している。

事件記録ではシェフ容疑者らの氏名が明記されている一方、逮捕状では容疑者はイニシャルのみで示されている。これは、起訴前の容疑者の氏名を公表しないというアルバニアの一般的な運用に沿ったものだ。

逮捕状に記されたイニシャルは文書に登場する人物のフルネームと一致しており、その中には「A.Sh.」と記載された容疑者1人も含まれる。

ツァクラニ氏はシェフ容疑者が捜査対象であることを認めた上で、逮捕状には動じていないとし、アルバニアの検察は政治家や実業家の影響下にあると「広く見なされている」と述べた。

SPAKは容疑者20人のうち、その後、逮捕または起訴された人物がいるかどうかを明らかにしていない。

<アルバニア出身の「善良な市民」>

SPAKの文書によれば、シェフ容疑者はリゾート計画用地を約1億1000万ユーロ(約203億8800万円)で売却した。SPAKは、この資金を公証人の管理口座で凍結するよう命じ、シェフ容疑者に渡らないようにしたとしている。

SPAKは記録の中で、シェフ容疑者と関係者らが「違法に得た資金で土地を購入し、虚偽の不動産権利書を作成したり、土地面積を不自然に拡大したりするなどして、所有書類を偽造した」と指摘。「その後、当局が容易に追跡できないよう、不動産は譲渡または交換された」としている。

サザンの広報担当者は「当社は引き続き、土地取得は合法的かつ、所定の手続きに従って行われたと考えている。これまで通り、必要に応じてあらゆる法的手続きに従い、協力する」と述べた。

ロイターは同広報担当者に対し、検察当局によるシェフ容疑者への容疑を踏まえてもなぜ土地取得が合法だと考えるのか、詳細な説明を求めたが、さらなる回答は得られなかった。

ツァクラニ氏はロイターに対し、シェフ容疑者の一族は100年以上前のオスマン帝国時代からこの土地を所有しており、同容疑者はリゾート事業の投資家に対して合法的に売却したと説明。また、シェフ容疑者は1998年、「犯罪組織」によって兄弟と叔父を目の前で殺害された後、米国に政治亡命を申請した、善良な市民だとも語った。この亡命に至った経緯について、ロイターは独自に確認できていない。

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