Max Hunder Tom Balmforth
[キーウ/ロンドン 16日 ロイター] - ウクライナのゼレンスキー大統領に事実上更迭されたフェドロフ前国防相が16日、シルスキー軍総司令官を公然と批判し、ロシアとの戦争遂行を巡る政権・軍内部の対立がはっきりと表面化した。
記者会見を行ったフェドロフ氏は、シルスキー氏が自身の政策を妨害し、軍改革を阻止してきたと主張した。
フェドロフ氏によると、自身はこれまでゼレンスキー氏にシルスキー氏の更迭を求めたものの受け入れられず、その後は協力関係を築こうとしていた。しかしシルスキー氏は舞台裏で意図的に自身の取り組みを妨げていたという。
フェドロフ氏は「提案したあらゆる施策が阻まれた。シルスキー氏は問題について率直に話し合う姿勢がない」と断言。軍内部に虚偽報告や指揮系統の混乱、責任の所在が不明確な体質が存在すると指摘し、シルスキー氏がそうした組織文化を温存しているとの見方を示した。
さらに「ロシアに非対称的に勝つ方法を考える代わりに、国を分断する方法を見つけた」と切り捨てた。
これに対してシルスキー氏は短い声明を発表し、フェドロフ氏の国防相としての功績に謝意を示した上で「今は戦争に集中する必要がある」と述べたが、フェドロフ氏の批判内容については言及しなかった。
<若手改革派と経験豊富なベテラン>
今回の対立は、ロシアの全面侵攻開始から4年余りが経過する中で高まるウクライナ軍内部の緊張と、戦争遂行を巡る異なる考え方を浮き彫りにしている。
35歳のフェドロフ氏は、ドローン(無人機)や先端技術の活用こそが戦況を変える鍵だと訴える若手改革派の象徴的存在で、中距離・長距離攻撃用ドローンの生産拡大や防衛調達改革を主導してきた。
在任中には、ウクライナ軍の戦場での態勢改善に加え、ロシア国内の石油インフラや軍事施設を標的としたドローン攻撃の拡大が進んだ。
こうした中で首都キーウではフェドロフ氏支持者らの抗議デモが行われ、参加者の大半が男女とも30歳未満と見受けられた。
またフェドロフ氏は、自らが国防相に復帰する可能性を否定しなかったようだ。ただそれがどのような形で実現するかは分かっていない。
軍内部からはフェドロフを擁護する声も上がった。ミハイロ・ドラパティ元陸軍司令官は支持を表明し、フェドロフ氏に任命された空軍のパブロ・イェリザロフ副司令官も辞任を表明した。
イェリザロフ氏はフェドロフ氏の退任について「ウクライナ防衛にとって大きな損失だ」と述べた。
一方で60歳のシルスキー氏は旧ソ連時代にモスクワで軍事教育を受けた職業軍人。2022年の首都キーウ防衛や同年のハルキウ州での反攻作戦を指揮した実績を持ち、24年2月に軍総司令官に就任した。
ゼレンスキー氏も両者の対立が存在することを認めたが、解決策についてはコメントを避けた。
確かにウクライナ軍はフェドロフ氏らの主導でドローン戦力の拡充を進めてきたが、慢性的な歩兵不足という課題も抱える。兵員確保のため徴兵活動を強化しているが、市民男性を街中で拘束して徴兵する手法への反発も広がっている。