Poppy McPherson Panu Wongcha-um

[オスマック(カンボジア)/バンコク 15日 ロイター] - カンボジアの大物実業家が支配するカジノ企業「リム・ヘン・グループ」が、特殊詐欺および人身売買の拠点となっていたタイ国境付近の複合施設の家主であったことが、ロイターの調べで明らかになった。

ロイターが入手した2024年3月付の賃貸契約書によると、リム・ヘン・グループは国境沿いにある自社カジノの一つ「ロイヤル・ヒル」と敷地を共有する建物を、市場価格を大幅に上回る賃料で中国籍の人物に貸し出していた。

タイ軍やこれらの建物で働いていた人々へのインタビュー、およびロイターが今年2回行った現地取材によると、建物内には複数の国の銀行オフィスや警察署に見えるよう改造された部屋があり、世界中の被害者を標的にした特殊詐欺の舞台となっていた。

特殊詐欺が行われていた建物とリム・ヘン・グループの商業的つながりについて、詳細を報じたのはロイターが初めて。

ロイターは、同グループがこの敷地内で行われていた人身売買や詐欺に直接関与していた証拠は発見していない。

ロイヤル・ヒルは電話やメールでの取材要請に回答しなかった。ロイターはリム・ヘン・グループにも書留郵便で質問状を送付し、受け取りは確認されたが、回答は得られなかった。

独立系組織「カンボジア人権行動連合」および、ビジネスと人権分野を専門とするピセス・ドゥチ弁護士によると、所有物件が犯罪目的で使用されていることを家主が認識しながら放置していたことが捜査で立証されれば、検察は家主を起訴できる。

リム・ヘン・グループは、遅くとも2024年9月までにはロイヤル・ヒルで人身売買が行われている可能性について認識していた。同グループの代表者が当時、ここに外国人が拘束されていると報じたカンボジアの出版会社2社を相手取り、法的申し立てを行っていたからだ。

この複合施設での特殊詐欺捜査を主導しているタイ国家警察のタチャイ・ピタニーラブット氏は現地を訪れた記者団に対し、中国のギャングがロイヤル・ヒルの敷地内で詐欺を行っていたと述べたが、ギャングの正体についての詳細は明らかにしなかった。

ロイターが入手したタイ治安当局の報告書2件によると、タイ当局はリム・ヘン・グループが敷地を所有していたことを特定している。

<カジノとのつながり>

東南アジアには、主に中国系の犯罪グループが人身売買の被害者を拘束し、ロマンス詐欺や警察官なりすまし詐欺を強制的に行わせる「詐欺工場」が多数存在する。米国政府の推計によると、2024年に米国人がこの地域の詐欺グループによって失った額は100億ドルに上る。

非営利団体「組織犯罪に対抗するグローバル・イニシアティブ」のジェイソン・タワー氏によると、中国系詐欺シンジケートの運営者の多くはカジノにも関与しており、不法に得た資金を隠す手段としてカジノを利用している。

アムネスティ・インターナショナルの調べでは、カンボジア国内で少なくとも12カ所の詐欺センターがカジノのオーナーによって「直接支配」されていた。ロイターはこの数字を独自に確認してはいない。

カンボジアの政治を研究する米アリゾナ州立大学のソパル・イヤー教授は、カンボジアのカジノは政治家とつながっている実業家によって支配されていることが多いと指摘する。

その中の一人がリム・ヘン氏で、軍の上級将校らとの懇親会で写真に写っており、公爵に相当する王室の称号を有している。また、彼がメンバーとなっている経済団体によると、昨年カンボジア軍に2万ドルを寄付している。

カンボジア政府は詐欺センターの根絶を誓っている。しかし世界中のメディアが今年、複合施設内で見つかった偽の警察署や銀行の画像を報じたにもかかわらず、政府はロイヤル・ヒルが単なるホテルだとの主張を繰り返してきた。

<法外な賃料>

ロイターが入手した賃貸契約書によると、ロイヤル・ヒルは敷地内の3棟の建物を、中国籍の人物に2年間、月額20万ドルで賃貸することになっていた。

この賃料は、閑散とした国境の町にある建物としては極めて高額だ。首都プノンペンの高級住宅街にある同規模の複合ビルは、5月に月額2万5000ドルで広告に出されていた。

タイ軍は昨年12月にカンボジアとの間で発生した短い国境紛争の際、ロイヤル・ヒルを砲撃し、現在この場所を占拠している。ロイターは今年2月と3月、タイ軍の招きでロイヤル・ヒルを訪れた。タイ軍は、ここが詐欺施設だった証拠を示すために現地を公開したと説明している。

カンボジアのネット・ピアクトラ情報相は、タイ軍の主張は虚偽であり、タイはカンボジアの民間インフラを攻撃したとロイターに語った。

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