とはいえ、対等な立場で多数の衛星に乗ってもらうには、ロケット側によるさまざまな調整が必要だ。軌道や座席にあたる打ち上げ枠、"乗り心地"に関する情報をしっかり開示しなくてはならない。搭載できる衛星のサイズ、ロケット上段に衛星を取り付けるインターフェイスの種類なども大切だ。需要が高い10センチ角の規格化された超小型衛星キューブサット向けには、衛星を収納するケースとしてどの方式が利用できるのか、といった情報も必要になる。

JAXAは日本語、英語のユーザーズマニュアルを公開し、衛星取り付けのインターフェイスに世界のロケットで実績を持つLightbandを使用していること、キューブサット収納用には国際宇宙ステーションからのキューブサット放出で日本がこれまで使用してきたJ-SSODを改良したE-SSODを使用しといった情報を公開している。ライドシェア打ち上げに統一規格があるわけではないが、これまで海外の他のロケットを利用してきたオペレーターにとって安心できるやり方だといえる。

ライドシェア打ち上げ機会はあと3回

イプシロンロケットによるライドシェア打ち上げ機会は「革新的衛星技術実証プログラム」と呼ばれており、あと3回チャンスがある。機会を待っている衛星オペレーターは日本国内に多数あり、すでに2号機には33の提案から、超小型衛星・キューブサット7機が選定された。第1回打ち上げの衛星が7機とも無事に軌道投入できたことで、イプシロンロケットはライドシェアを成功させた実績を持つことになった。成功はさらなる関心を呼ぶと考えられる。

ただし、イプシロンがライドシェアという潮流を掴んで世界で求められるランチャーにすぐなれるかというと、そうではないと思える。JAXAの山川宏理事長は、革新的衛星技術実証の募集はあくまでも日本国内の組織が代表となる衛星に限られ、世界に向けた展開については「今後の課題」とコメントするにとどめた。

欧州のVEGAロケットもライドシェアに参入

一方で、イプシロンと同クラスの小型ロケット、欧州のVEGA(ヴェガ)ロケットは2019年に1〜400キログラムの衛星を搭載するSSMS(小型宇宙機ミッションサービス)ライドシェア打ち上げの実証を行う。ヴェガロケットを運用する欧州アリアンスペース社の東京事務所代表、高松聖司氏によれば、「募集開始からすぐに打ち上げ枠は埋まった」といい、ヴェガロケットがライドシェア打ち上げに乗り出すことで世界の衛星オペレーターの注目を集めていることがうかがえる。

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アリアンスペース社東京事務所代表、高松聖司氏。撮影:小林伸

SSMS POCには、Facebookの通信実験衛星アテナが搭載されることも注目に値する。アテナは衛星通信ではまだ実用化されていない高周波数帯の通信実験を予定しており、こうした実験的な小型衛星に打ち上げ費用の安いライドシェアは適している。

ヴェガはイプシロンと同様に、H-IIAやFalcon 9といった大型のロケットよりは小さく、ライドシェアの場合でもそれほど多数の衛星を搭載できるわけではない。だが、イプシロンが搭載衛星数7機に留まるのに対しヴェガは10機以上が予定され、2019年中には搭載能力を増強した新型VEGAもデビューする予定だ。さらに、2020年に初打ち上げ予定の欧州の大型ロケット「アリアン6」にもヴェガで実証したライドシェア衛星放出機構を搭載することになっている。着々と小型衛星の打ち上げビジネスを取り込んでいく道すじが欧州の場合、見えているのだ。

いち早く衛星放出の技術実証では実績を上げたものの、将来、世界に対して打ち上げ機会が提供されるのか不透明なイプシロンと、実証はこれからだがコンセプトが開かれているヴェガ。ライドシェアという需要を掴むには、日本でまだまだやらなければならないことは多いように思える。

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2018年11月に打ち上げられたアリアンスペース社のVEGAロケットと衛星搭載部分の作業。クレジット:Arianespace
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VEGAはイプシロンと同様の小型衛星向けロケットだが、2019年には能力増強の新型が登場する。

クレジット:Arianespace