Kentaro Okasaka
[東京 9日 ロイター] - 酒離れが進む日本で、「脱国内ビール依存」を共通の目標としながらも大手4社の成長戦略は二分化が鮮明になっている。サッポロビールとアサヒグループホールディングスは、祖業の酒類事業に力点を置いて海外市場の開拓を模索。一方、キリンホールディングスとサントリーホールディングスはヘルスサイエンス分野で海外成長を図る。市場関係者からは、各社は「似て非なる会社」となりつつあり今後その差はさらに広がっていくとの見方が出る。
<成長続くアジア・アフリカ市場へ>
日本で人口減や若者のアルコール離れが進む中、海外に市場を求める動きが相次いでいる。
「海外の成長戦略において極めて重要なマイルストーンだ」。サッポロビールは6日、デンマークのビール大手カールスバーグとの資本業務提携を発表し、時松浩社長は会見でこう語った。シンガポールに合弁会社を設立し、カールスバーグが高い市場シェアを持つ東南アジアでサッポロプレミアムビールを拡販する。
時松氏はこれまでの海外事業を振り返り「海外市場で独自に強固な販売網を構築するにはかなり長い時間を要する」と指摘。 今回の提携は「そうした課題を解決し、より効率的かつスピーディーに成長を実現するための戦略的な選択だ」と語った。
サッポロは物言う株主である投資ファンド、3Dインベストメント・パートナーズから不動産事業売却の働きかけを受け、昨年12月に「恵比寿ガーデンプレイス」などの不動産事業を手掛けるサッポロ不動産開発を4770億円で米投資会社などに売却することを決めた。時松氏によると、合弁会社への出資約1029億円の原資は売却益だという。
アサヒグループHDも昨年12月、英酒造大手ディアジオの東アフリカ事業を計約4654億円で取得すると発表。勝木敦志社長は8日の決算会見で「東アフリカ市場は、人口増加や経済拡大を背景に今後の高い成長が期待される地域」とし、取得する企業はケニア、タンザニアで高い市場シェアを持つため「事業ポートフォリオの強化を実現する上で重要なドライバーとなる」と期待を込めた。
<健康事業は成長加速の段階に、北米でのM&Aも視野>
一方、健康関連事業の拡大を進めるキリンHDの吉村透留常務(ヘルスサイエンス事業本部長)は8日、都内で開いた投資家向けイベントで、同事業は「基盤構築のフェーズを終え、利益成長を加速する段階に移行した」と述べた。19年に同事業を開始後、23年にサプリメントなどの健康食品事業を手掛ける豪ブラックモアズを買収。24年にはファンケルを株式公開買い付け(TOB)で完全子会社化した。25年12月期に初の黒字化を達成。35年に売上収益5000億円を目指す。
主力の「プラズマ乳酸菌」について、6月にオーストラリアの医療製品管理局(TGA)から素材使用承認を取得し「海外展開拡大への大きな一歩」となった。8日には同菌を配合した飲料を初めてシンガポールで発売すると発表。吉村氏は、さらなる成長に向けM&A(合併・買収)によるインオーガニック成長も組み合わせるとし「世界最大の市場でもある北米市場なども進出の視野に入れていきたい」と語った。
キリンは2月にバーボンウイスキーの「フォアローゼズ」を米酒造会社に売却すると発表。得られる資金の用途は検討中としている。
サントリーHDは4月に第一三共の連結子会社、第一三共ヘルスケアの買収を発表した。解熱鎮痛薬「ロキソニン」、風邪薬「ルル」など「非常に強いブランドを保有している」(宮永暢・常務兼経営戦略本部長)という同社と自社の健康食品・飲料などとのコラボレーションでシナジー発揮を狙う。健康領域での売上高を足元の2000億円規模から2035年に約2倍に増やすとの目標を掲げている。
ある証券会社のアナリストは、「脱国内ビール」という点では共通しているものの「各社の戦略は真っ二つに分かれ、似て非なる会社になってきた。今後その差異は広がり、先鋭化していきそうだ」と指摘する。「グローバルのビールプレーヤーになるのか、ヘルスサイエンスの方にポートフォリオを持っていくかの違い。ビール一本足で大丈夫なのかという見方はあるが、どちらが正解なのかはまだわからない」と話している。