Satoshi Sugiyama Hina Suzuki Rocky Swift

[東京 8日 ロイター] - 日本の上場企業が過去10年間に提出した有価証券報告書などをロイターが分析したところ、「レアアース」(希土類)に言及する企業が今年5月以降急増し、そのすそ野も広がっていることが分かった。重要鉱物の主要供給国である中国による輸出規制を経営リスクとして捉える動きが、日本企業の間で強まっている様子が浮かび上がった。

調査対象は、東京証券取引所に上場する企業が2016年6月から26年6月までに提出した有価証券報告書や決算短信。レアアースに言及した企業は今年4月まで、ほとんどの月で40社未満にとどまっていたが、5月は86社、6月は105社へ増加した。毎年5━6月は企業の書類提出が集中するが、今年はレアアースに触れた会社が前年の同時期と比べて倍増している。うち3分の2超の企業が、業績や事業活動への影響が生じている、あるいは将来的に生じる可能性があるとした。

レアアースを巡るリスクへの言及は、4月まで機械などの資本財や素材関連企業に集中していたが、5月以降は一般消費財やエレクトロニクス関連企業でも増えた。

シチズン時計は6月に提出した有報で、中東情勢に加えてレアアースの輸出規制を地政学リスクとして挙げ、「長期化した場合には、当社グループの生産活動や業績に影響を与える可能性がある」と記載した。

シチズンはロイターの取材に、主にモーターにレアアースを使用していると説明。現時点で生産や業績への影響はないとした。

医療機器メーカーのオムロン も6月に提出した有報で、米国の関税政策やイラン、ウクライナを巡る紛争と並び、レアアースなどの輸出管理強化をリスク要因として挙げた。ロイターの取材に対しては、レアアースそのものを調達しているわけではないが、購入する部材の材料に含まれるケースがあると説明。現時点で生産活動や業績への影響は大きくないとした。

中国は2025年4月に数種類の重レアアースとそれらを含む磁石に対する輸出規制を導入した。さらに高市早苗首相の台湾有事を巡る発言後の今年1月、日本向けの規制を強化した。

中国当局が6月に公表した税関データによると、テ​ルビウムや酸化ジスプロシウムの日本向け輸出は昨年11月以来途絶えているほか、酸化イットリウムの出荷も12月以降、ごく少量にとどまってい‌る。

日本が中国によるレアアースの輸出規制に直面するのは今回が初めてではない。尖閣諸島(中国名・釣魚島)を巡る関係悪化を背景に、中国は2010年にも対日輸出を事実上停止した。以後、日本の産業界は備蓄を進めて供給途絶リスクへの備えを強化してきた。

楽天証券経済研究所のコモディティアナリスト、吉田哲氏は「有報などでレアアースへの言及が増えてきていることは、少しずつ備蓄の取り崩しが進んでいて、価格やその量のダメージが大きくなってきているということの表れではないか」と指摘する。

日銀が7月1日に発表した短観によると、日本企業の景況感は底堅さを維持している。しかし、用途が拡大しているレアアースの調達難が長期化すれば、生産への支障やコスト上昇などを通じて企業活動に影響を及ぼす可能性がある。

みずほ総合研究所の主任エコノミスト、東深沢武史氏は、2010年当時に比べてレアアースの用途が広がっているとした上で、「仮に当時と同程度まで輸出が絞られることがあれば、影響は大きくなりやすい」と話す。

重要鉱物の調達先の多様化を進める経済産業省はロイターの取材に、「引き続き同志国や企業とも連携して、出資や助成金を活用した支援を行い、レアアースなどの重要鉱物の安定供給確保に取り組む」とコメントした。

(杉山聡、鈴木日菜、Rocky Swift)

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