本を読もうとしたものの、気づけば同じ段落を何度も読み返している――こうした経験は決して珍しいことではない。
映画を1本観る間、一度もスマホに触れずにいられない。仕事中、1つのタスクに集中し続けられない。延々と更新されるSNSのフィードをついスクロールしてしまう。現代人の多くが、集中時間(アテンション・スパン)の維持に苦しんでいるようだ。
デジタル習慣によって私たちの集中力が低下する中、これに対抗する新たなトレンドが登場した。「アテンション・スパン・マキシング(集中時間の最大化)」だ。
考え方はいたってシンプルだ。読書に没頭する、長尺のコンテンツを途中で遮られることなく視聴する、スマホの誘惑を断ち切る、といった行動を通じて、より長い時間集中できるよう脳を鍛え直すというものだ。
しかし、集中力は本当にこの方法で取り戻せるのだろうか。
『ATTENTION SPAN(アテンション・スパン) デジタル時代の「集中力」の科学』の著者で、20年以上にわたり人々のデジタル機器との付き合い方を調査してきたグロリア・マークは、デジタル機器に対する平均的な集中時間が約47秒にまで激減していることを突き止めた。
「TikTokをはじめとする短尺のコンテンツを消費していると、人は辛抱強さを失っていく。コンテンツが目まぐるしく変わるため、常に刺激を期待するようになるからだ」と、マークは言う。「その結果、1つのコンテンツに長時間向き合うために必要な精神的スタミナを養う機会が失われてしまう」
その一方で、マークは集中力について、その活動に本質的な「認知的努力」が伴うものであれば、鍛えて強化することができるとも指摘する。
たとえば、受動的にゲームを何時間もプレイしたところで、全体的な集中力の向上にはつながらないかもしれないが、読書や内省を伴うタスクであれば、熟考する力やワーキングメモリ(作業記憶)といった能力を養う手助けになる。