Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto
[東京 7日 ロイター] - 政府が7月中にも閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案の内容を受け、市場が大きく反応している。長期金利の上昇や円安基調が固定化し、「骨太相場」とも言える状況だ。一方、7日に開かれた骨太を議論する自民党の会合では、特例公債(赤字国債)の発行に上限を設けるべきではないなどの意見が多く聞かれた。政府関係者はロイターの取材に、高市早苗首相やその周辺に、市場への不信と金利上昇への楽観論が広がっていると明かす。
<国債発行の上限に反発>
「国債発行に上限を設けるかのような文言は不要だ」。7日午後、東京都内の自民党本部で開かれた党政務調査会の会合で、複数の国会議員が声を上げた。会場には約150人の党所属議員がひしめき合う。通常は認められる秘書の入室すら禁止となるほどの人数だ。
議題となったのは政府が作成を進める骨太の原案。「市場の信認確保に配意しつつ、通年の国債発行額などを具体化する」との文言に多くの議員がかみついた形だ。「国債発行のリミッターを設けるものではない旨を加筆してほしい」「概算要求で各省庁が推し進める予算をしっかり確保できる環境を整えてほしい」などの要望が相次いだ。
「市場の信認は自らつくるものだ。財政の持続可能性をもっと前面に押し出してほしい」「原案が報じられただけで金融市場が動揺している。これ以上表現を緩めたら大変なことになる」。こうした金融市場への配慮を求めた意見も出たが、多数派とは言えなかった。
<骨太に反応する市場>
骨太原案の主要部分には、高市首相が掲げる「成長投資」と「危機管理投資」への強い思いがにじんでいる。成長力強化に向け、人工知能(AI)や半導体など戦略17分野を中心とした大胆な投資戦略を進める方針を明記。2040年度までの累計で370兆円を超える官民投資を想定し、同年度に国内民間設備投資を年230兆円、名目国内総生産(GDP)を1100兆円に近づける経済成長を目指すとした。
財政政策では、債務残高対GDP比を安定的に低下させ、経済成長と財政の持続可能性を両立させる方針を掲げ、「2%の物価安定目標の実現の下で、できるだけ早期に、実質で1%を上回る、名目で3%を上回る経済成長を定着させ、さらに引き上げていく」と明記した。「財政健全化」の文言はなく、これまで中核だった基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)は、債務残高対GDP比の低下に向けた補助的な指標に位置づけた。
こうした内容が報じられると市場は反応。長期金利の上昇基調に拍車がかかり、米国金利の上昇も相まって7日には新発10年国債利回りが前営業日比2.0ベーシスポイント(bp)上昇して2.850%と、1996年10月以来約30年ぶりの高水準を更新した。外国為替市場でも円が対ドルで162円前後と、円安・ドル高水準で推移している。
<政府内に広がる不信と楽観>
複数の政府関係者によると、骨太の主要部分について修正する予定はない。関係者の一人は、骨太に書かれた大部分の方針が、すでに高市氏が発信済みの「既知の内容」であることに加え、国債発行についても「市場の信認」に配慮すると明記した点を挙げ、「極めて新味のない骨太だ。むしろ市場が反応しないように気をつけた内容になっている」と話す。
それでも市場が荒れたことに、骨太策定に携わった関係者の一人は「市場参加者は本当に原案をちゃんと読んでいるのか」と首をかしげた。別の関係者も「市場がネタにして遊んでいるだけのように見える」と不信を募らせている。
城内実経済財政相は7日の記者会見で、「骨太相場」を「趣旨と異なる受け止めであり誤解」だと表現した。「野放図な財政政策を取るものでは全くない。重要なのは財政健全化という言葉が入っているかどうかではなく、財政の持続可能性をどの指標で確認し、どのように実現していくかだ」とも語った。
ただ、市場の反応を「遊び」や「誤解」などと軽んじる風潮は、事態をより深刻にしかねない。実際、ある政府関係者は「ありもしない危機を煽るような言説には付き合わない。自分たちは十分気を使っているから悪くない。これが官邸のスタンスだ」と述べ、官邸の危機感の欠如に警鐘を鳴らす。「金利上昇は一時的なものだとの過度な楽観論が政府内に広がっている」
(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)