Samia Nakhoul

[ベイルート 6日 ロイター] - イランの前​最高指導者アリ・ハメネイ師の国葬は、単なる国家的な別れの儀式にとどまらなかった。テヘランに集まった多数の弔問客は、米国とイスラエルに対し、イランを崩壊させようとした試みが失敗に終わったというメッセージを送った。

イランは、2月28日の米国とイスラエルによる攻撃で始まった戦争によって弱体化した姿を見せるどころか、屈しない姿勢と結束を示し、今後の展開を自ら主導する構えを打ち出した。

地域の当局者や外交官、アナリストらは、今回の国葬を、イランが耐え抜いた実績を交渉力に転換しようとした節目とみている。

<ホルムズ海峡を交渉材料に>

戦争を通じて浮き彫りになったのは、ホルムズ海峡に対するイランの影響力だ。イランは、核開発計画に関するいかなる合意も、ホルムズ海峡という世界のエネルギー輸送における要衝を自国が支配しているという現実を認めるところから始まるべきだと要求できるようになった。

米政府が意図した60日間の停戦は、イランの核開発を阻止するための外交を再開させる目的だったが、結果的に別の対立を招いた。

この対立でイランの最大の資産となっているのは、濃縮ウランではなく地理的立地だ。同国は海峡周辺における支配的地位を認めさせることで、戦時の成果を恒久的な戦略的優位に転換しようとしている。

停戦合意とそれに付随する覚書に基づく最終合意に向けた60日間の期限はまだ始まっておらず、この空白の中で主導権を握っているのはイランの側だ。

米シンクタンク、中東研究所のアレックス・バタンカ氏は、ホルムズ海峡を利用する船舶から徴収する通航料で巨額の収入が得られる可能性があるものの、イランにとって海峡は経済的資産というよりも政治的正当性の源泉だと指摘。「イランにとって象徴的な要素は、収入よりも重要だ。彼らは、海峡がイランのものであるという象徴的な承認を求めている。海峡の主権国家としてイランを認めるかどうかの問題だ」と付け加えた。

バタンカ氏はペルシャのことわざを引いて「なぜダイヤモンドをキャンディーと引き換えに差し出す必要があるのか」と問いかけた。イランの計算に基づけば、ホルムズ海峡こそが「ダイヤモンド」であり、制裁緩和や凍結資産の解除は「キャンディー」だ。

<交渉引き延ばしを図るイラン>

イランの指導部もこの立場を強調している。

ガリバフ国会議長は「ホルムズ海峡はわれわれの最大の力の源であり、この『神の祝福』を適切に守らなければならない」と述べ、イランはいかなる状況下でもそこでの権利を放棄しないと強調した。

地域の情報筋や外交官によると、イランは核開発問題に戻る前に、戦争で得た成果、つまりホルムズ海峡における優越的地位を確定させようとして意図的に交渉を遅らせているという。

イランの専門家で元米外交官のアラン・エア氏は、核爆弾の保有を否定しているイランにとって、ウラン濃縮の問題は後回しにできるが、ホルムズ海峡に確固とした地位を築く取り組みは最優先問題だと解説する。

エア氏は「イランは時間を稼ぎ、交渉を引き延ばすことをいとわない。彼らは海峡の支配を望んでおり、その支配を制度化するために交渉を利用している」と述べた。

具体的には、ホルムズ海峡を通過する船舶に関する取り決めや調整の仕組み、サービス料金の徴収などを通じ、イランの影響力を制度化することが想定される。このため湾岸諸国は、米国がこの新しい現実を覆すことができるのか、あるいはその意思があるのかを見極めようとしている。

イランは、トランプ米大統領は国内政治に制約され、11月の議会中間選挙を前に新たな衝突を警戒しているので、イランが譲歩を迫られるよりも、トランプ氏の方が合意を急がなければならない圧力にさらされていることになる。

エア氏は「イラン側はトランプ氏が(この問題から)手を引き、次の課題に移りたがっていることを知っている。時間は自分たちの味方であり、彼を追い詰められると分かっている」と分析した。

米国の元中東交渉担当官のアーロン・デービッド・ミラー氏によれば、米国による軍事作戦がイランの影響力を打破できなかった以上、イランとしては海峡周辺の新しい現状が受け入れられ、海外の数十億ドルの資産の凍結解除に意味のある進展があるという確信が持てるまで、核開発問題について真剣に取り組む理由はほとんどないという。

ミラー氏は「60日という期限は最初から幻想だった。イラン人は、この新しい現状を達成したと確信できるまで核開発問題には動かないだろう。彼らはトランプ氏と世界に対し、2月27日以前の状態には二度と戻らないことを理解させようとしている」と述べた。

<手放さない宝>

ミラー氏の見立てでは、イランは戦後秩序の「主要な現実」を巧みに利用している。それは、米国の軍事力も米海軍による封鎖の脅威も、ホルムズ海峡におけるイランの地位を根本的に変えることはできなかったということだ。

同氏は「イランはそうした地位を手放すつもりはない」と述べた。

アラブ首長国連邦(UAE)のシンクタンク、エミレーツ政策センターのエブテサム・アルケトビ所長は、原因となった問題を解決せずに戦争を停止させたことで、米国はホルムズ海峡を単なる圧力手段から、イランにとって永続的な交渉力の源泉へと格上げする手助けをしてしまった恐れがあるとの見方を示した。

湾岸諸国の当局者も、海峡周辺の情勢を左右するイランの能力が示されたことで、イランが制裁解除や核開発問題での進展と引き換えにしても手放したがらないような優位性が生まれてしまったことを懸念している。

アルケトビ氏は「イランは米国をはじめ、あらゆる相手に圧力をかけている。このホルムズという宝を見つけた今、彼らがそれを手放すことはないだろう」と語る。

複数の専門家は、米国が最終的に、主にイランが提示する条件下での海峡再開を受け入れざるを得なくなる可能性が高いとみている。

エアー氏は「誰も勝者にはならないが、イランが失うものは米国よりも少ないだろう」と話した。

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