――クリスパー研究の進展の速さに驚いているか。

クリスパーの仕組みとゲノム編集への応用について論文を発表した2012年当時には、その5年後に「ヒト胚に応用可能」とのニュースが報じられるなどとは想像もできなかった。

――クリスパーの用途の広さを示すような研究があるのか?

私はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)とも提携する研究機関「イノベーティブ・ゲノミクス・インスティテュート」を率いて、ゲノム編集を人間の健康や環境の問題に応用することを目的に研究している。私のような基礎研究をする者と、臨床医や植物生物学者らの提携が狙いだ。

私たちはUCSFの神経外科医とチームを組み、遺伝子のための編集分子を脳に導入する方法を探っている。これは神経疾患の治療法になり得るもので、生殖細胞系列とは無関係だ。

私たちは2017年、クリスパーを用いたマウスの脳内のDNA編集の手法をネイチャー・バイオテクノロジー誌で発表した。ハンチントン病(遺伝性の神経変性疾患)治療に取り組むほか、さまざまな動物における治療効果を研究してもいる。有望なら、UCSFで臨床試験に進むことを視野に入れている。

遺伝子編集、特にクリスパーを研究する科学者たちの大多数は、こうした分野での応用に力を入れている。彼らの多くは、ヒトDNAの「遺伝的」改変をしようとしているわけではない。患者の「一生」に良い効果をもたらすようなDNA改変を行うことを目指している。

<2019年1月22日号掲載>

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先天性疾患を予防するために、ヒト胚のDNAを改変することは可能――未来を予見したようなこの論文が、オレゴン健康科学大学の研究者らによって発表されたのは2017年のこと。この研究は、遺伝子編集を可能にする新技術クリスパー・キャスナイン(CRISPR-Cas9)の威力を改めて見せつけた。だが、この研究によってヒト胚を編集することに対する激しい議論が巻き起こったなか、見過ごされていた事実がある。クリスパーの用途が非常に多角的だという点だ。
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