<遺伝子編集を可能にする技術「クリスパー・キャスナイン」開発者のジェニファー・ダウドナに聞いた、ヒト胚DNA改変と遺伝子編集の真の目的>
クリスパーの技術は、癌から糖尿病、感染症まで多様な疾患の有効な治療法を開発するために利用されている。さらに、遺伝子編集を農業の問題やバイオテロ対策、環境問題の解決に応用しようと取り組む研究者もいる。
クリスパー技術が最初に見いだされてからというもの、遺伝学者たちはあらゆる生物の遺伝情報を改変するためのツールとして、研究室内でこの技術を応用してきた。そして17 年にネイチャー誌に発表された研究が、クリスパーをヒト遺伝子に応用することへの倫理をめぐる議論を引き起こした。近い将来、デザイナーベビーの誕生が可能になるのではないか、と人々に不安を呼び起こしたのだ。
画期的なクリスパー技術の開発者の1人であるカリフォルニア大学バークレー校の微生物学者ジェニファー・ダウドナに、クリスパー技術の急速な進化や、その望ましい将来像について、本誌ジェシカ・ファーガーが聞いた。
――2017年のネイチャー誌に載った研究を、あなたはどう受け止めたか。
ある意味、驚きはなかった。遺伝性疾患の治療を目的としたゲノム編集のためにこの技術を応用できるのでは、という関心は常に付きまとっていた。この技術を生殖細胞系列に応用できれば、誕生時から疾患遺伝子変異を予防することも可能になる。
2017年の研究で本当に注目すべきは、患者の治療に道を開いたこと。こうした胚で、実現可能な遺伝子編集のプロセスが確立されたことだ。
――胚のDNA編集を行わずにこの技術を生殖医療に役立てる方法はあるか。
遠くない将来、ヒトの体細胞から配偶子(卵子や精子)を作ることが可能になるだろう。動物実験では既に成功している。人間でこれが可能になれば、遺伝性疾患を抱える患者の配偶子をクリスパー技術で作り、それを用いて体外受精することができる。ただしこの場合、胚のDNA編集は行っていないものの、クリスパーで遺伝に影響を与えるという問題は解決されていない。