パンチくん人気に沸く市川市動植物園
パンチを指さす安永さん(筆者撮影)

盛り上げることと、危機管理を同時に行い、土日も言葉を極限まで選びながらSNSを更新し続ける、張り詰めた緊張の日々。その圧倒的な当事者意識が、ネットの負の感情を次第に鎮火させ、サポーターの熱量を温かい「応援」へと昇華させていった。今はひと頃より誤解は減り、批判の声も落ち着いてきたという。

商業主義を排し、掴んだ市川のアイデンティティ

これほどのバズが起きれば、当然、周囲からは商業的なアプローチが殺到する。グッズ化、写真集の出版、タイアップ──。100社はゆうに超える数の企業からオファーが舞い込んだが、安永さんはいずれのオファーにも首を縦に振らなかった。実質、マンパワーの観点から難しい面もあった。

「パンチを決して売り物にはしない。消費させたくない。『したたかに稼げばいいじゃん』と言われることもあるが、そこで商業主義に走ったら、市川市動植物園らしさが失われてしまう」として頑固なまでにそのスタンスを堅持する。

目先の利益よりも、動物たちの福祉と、園のアイデンティティを守る。そのブレない姿勢こそが、結果として「市川」という街の認知度を高めることにつながった。これまで「浦安にディズニーがあり、船橋には『ふなっしー』がいるが、市川にはそうした代名詞的なものがない」と近隣市への羨みも覗く。それが今や、出身者が「パンチのいる市川です」と誇りを持って紹介できる街になった。それこそが、苦労して役所に入った若き日の安永さんが、職員人生を賭けてやりたかった「地元への恩返し」そのものだった。

「今回の経験を、いつか世の中の役に立てられたら」と、未来への野心も少しだけ覗かせる。自治体公務員という枠組みの中で、世界を相手に「奇跡のバズ」をコントロールし続ける“頑固な”理想主義者。安永さんの怒濤の2年目は、今日も「動物ファースト」の日常を守るために続いている。

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