<世紀の救出劇から半年、豪テレビの東南アジア特派員が「奇跡」の実態を明かした>

タイ北部のチェンライ県で大雨で増水した洞窟に閉じ込められた12人のサッカー少年たちは、救出時に大量の薬物を投与され、両手を後ろ手に縛られていた。

昨年7月にタムルアン洞窟から少年12人とコーチ1人が助け出された救出劇は、世界中の注目を集めた。あれから半年が経ち、当時の少年たちは約3週間ぶりに救出が始まるとき、直前に鎮静剤を投与され、潜水中にパニックに陥っても身動きが取れないよう両手を縛られた状態だったことが明らかになった。

オーストラリア放送協会(ABC)の東南アジア特派員、リアム・コクランが新著「The Cave(洞窟)」の中で、これまで知られていなかった救出劇の真相を暴露した。

「(タイ当局は)親たちを落ち着かせるために、少年たちは脱出のための潜水訓練を受けていると説明した。メディアも、救出時には少年たちの体に酸素を送る管を取り付け、前後にダイバーが付いて自力で泳いで脱出することになる、と報じていた。

実際の作戦は?

だが、実際は少し違った。「救出の唯一の道は、少年たちに薬を投与して意識をなくし、顔面にシリコンシールで酸素マスクを装着させた状態で、経験豊富な洞窟ダイバーに搬送させる、という方法だった」と、コクランは説明する。

多国籍ダイバーチームに最初に救出された少年が薬物を投与されたときの状況はこうだ。14歳の少年は鎮静剤を飲まされた後、意識がなくなるまで鎮静作用のある「ケタミン」を両足に何度も注射された。

オーストラリアのテレビ局9newsによれば、少年はその後ダイビングスーツを着せられ、身体にエアタンクを巻かれ、顔面にマスクを付けられた。両手は後ろ手にしてケーブルで縛れた。残りの少年たちに対しても同じ手順を繰り返したという。

英BBCによれば、少年たちの所属するサッカーチーム「ワイルド・ボアーズ」の救出劇から半年以内で、現場の洞窟はタイで最も人気の観光スポットになった。

救助活動中には元タイ海軍特殊部隊員のダイバー、サマン・グナンが意識を失い、死亡した。現在は彼の銅像が洞窟前に建っている。

(翻訳:河原里香)

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