さらに、園内の広場に設置されたトカラヤギの展示も見ものだ。ただ放し飼いにするだけでなく、体操の平均台のような細く高い頭上の一本橋をヤギが悠々と歩く姿を見せる工夫を凝らした。今では「空中を歩くヤギ」を目当てに訪れる来園客も多い。下から眺めるヤギはなかなかに風情がある。
「展示の工夫という意味では、市川市動植物園にはまだまだ頑張れる潜在能力、余地が大きく残されている」と安永さん。日本にいるわずか7頭のうち4頭が飼育されるスマトラオランウータンや、穏やかな性格のポニー、古参のレッサーパンダなど、この動植物園の“センター”を張れる候補は数多くいる。
パンチという大きなきっかけ、“入り口”から入ってきたお客さんに、他の動物たちの魅力や、スタッフの細やかな工夫を見てもらう。今、園はパンチから最大の「チャンス」をもらっていると安永さんたちは捉えている。
地域とともにまた来たい動植物園に
安永さんが課長に着任したのは2025年4月。すぐに着手したクラウドファンディングでは、駅前で地道にチラシを配り、締め切り前日にようやく目標の1000万円に到達するという苦労を味わった。しかし、パンチのバズを経た今、特別なPRをせずとも、国内外のサポーターからの寄付金はわずか2カ月あまりで5000万円を突破した。
この寄付金は、市議会の議決を経て、まずは猿山の改良など動物たちの環境改善に直接還元される予定だ。「世界中からいただいたプレゼントを、動物たちの豊かな日常のために使う」。ブームによる混雑やマナー問題、押し寄せる苦情への対応に追われ続けた数カ月だったが、安永さんが描く未来の景色は温かい。
「やがてこのパンチブームの喧騒が落ち着いたとしても、高まった関心を一過性で終わらせず、高い水準で維持していきたい。動物たちのことを第一に考えた、それでいて市民に開かれた、ほのぼのとした動植物園にしたい」。市の憩いの園を統括する課長の、穏やかながら力強い宣言だった。
開園40周年を前に、偶然と必然が織りなした奇跡のバズ。市川市動植物園は、よくある「赤字の公共施設」から、世界に誇る「動物ファーストの聖地」へと、着実にその姿を変えようとしている。
(記事の続きは後日公開予定です)
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