ドイツの「失われた10年」
しかし現在、そのモデルは大きな試練に直面している。
「2019年以降、ドイツ経済は成長を止めた」とフューストは言う。「多少の上下はあったものの、現在のGDPは2019年とほぼ同じ水準で、設備投資は2015年の水準まで落ち込んでいる」
「この10年は、ドイツの『失われた10年』だったと言える」
EUの公式予測では、ドイツは長期にわたる景気停滞と景気後退から緩やかに回復する見通しだが、2026年の経済成長率は0.6%にとどまる見通しだ。
EUが5月に公表した報告書は、ドイツについて「新型コロナウイルス禍以降、先進国の中でも景気回復が最も弱い国の一つ」と指摘した。エネルギー価格の高騰に加え、中国企業との競争や米国の関税政策が重なり、経済は「広範な停滞」に陥っているとしている。
さらに、2022年にはロシアがウクライナに全面侵攻し、コロナ後の景気回復への期待は大きく後退した。
ドイツは以前、天然ガスの半分以上、石油のおよそ3分の1をロシアから調達していたが、その供給を失ったことで高コストなエネルギー転換を迫られ、国際競争力も低下した。機械や化学、高付加価値製造業など、これまでドイツが優位を保ってきた分野では、中国国内での生産がドイツからの輸入品に取って代わる動きも進んでいる。
2010年代半ばまで、ドイツは欧州における産業機械の主要供給国とみなされていた。現在も一部の分野では不可欠な存在だが圧倒的な地位にはなく、機械輸出では米国、中国に次ぐ位置となっている。
こうした変化は、ドイツを代表する基幹産業で最も顕著に表れている。
販売の伸び悩みと市場シェアの低下により、長年にわたってドイツ経済を支えてきた自動車産業は危機に直面している。