Noriyuki Hirata

[東京 25日 ロイター] - 日本株が最高値圏で推移している。人工知能(AI)の成長期待に賭けて金利高を半ば無視している格好だ。ただ、ボラティリティー(変動度合い)の高さの裏には、これまで「打ち出の小槌」として期待されてきた米巨大テック(ハイパースケーラー)の財務の局面変化への警戒が潜む。AIデータセンター(DC)投資に変調が生じれば、関連銘柄の多い日本株にも影響が及びかねない。

<金利高より成長期待>

前日までの日本株の調整については、韓国半導体関連の悪材料を口実にした利益確定売りとの見方が多く、野村証券の澤田麻希投資調査部ストラテジストは「AI需要の成長ストーリーに大きな変化は生じていない」とみる。

米半導体大手マイクロン・テクノロジーが24日発表した2026年3―5月期の純利益が前年同期比15倍と四半期過去最高を更新したうえ、6―8月期の売上高見通しも市場予想を15%超上回り、株価が時間外取引で15%超急伸。AI成長ストーリーを後押しし、日経平均は一時3000円超高と急反発した。

日経平均の成長期待を映すPER(株価収益率)は、24年ごろまで14─16倍がコアレンジとみられていたが、足元では17─21倍へと中心レンジのシフトが意識されている。背景のひとつは、AI企業の堅調な業績への期待だ。

例えばキオクシアホールディングスの4―6月期連結純利益予想が前年同期比47倍の8690億円になるとの見通しを発表し、株高に拍車がかかった。高金利下では通常、バリュエーション面から債券に対する株式の相対的な魅力は低下するが、金利高を上回る成長期待が、株高を正当化してきた形だ。足元のEPS(1株当たり純利益)3800円にPER20倍を適用すると、日経平均は7万6000円となる。

FRBが17日のFOMCでウォーシュ新議長の下、ドットチャートの中央値が26年内の利下げから利上げに転じるタカ派色を強めても意に介さず、日経平均は22日までに8連騰し、6日連続で最高値を更新した。その後、高値警戒から3000円超下落したが調整は2日止まりとなり、元の水準をほぼ回復。AI成長シナリオが崩れていないことが示された。

<営業CFを飲み込む投資CF>

ゴールドラッシュのツルハシ業者になぞらえ、どのハイパースケーラーが勝ち残っても恩恵を受けられるツルハシ企業の多い日本株は相対的に優位との見方もある。

マイクロンの好決算はツルハシ論の現時点での有効性を裏付けるが、それはハイパースケーラーが巨額の投資を続けているからこそでもある。今後の焦点の一つは、米国で巨額なDC投資を継続しているアルファベットやメタ・プラットフォームズ、アマゾンドットコム、マイクロソフトといったハイパースケーラーによる投資動向だ。

DC投資の勢いがどの程度続くかを冷静に見極めようとする動きは、市場で出始めている。楽天証券経済研究所の土信田雅之シニアマーケットアナリストは、ハイパースケーラーのキャッシュフロー(CF)に局面変化が訪れつつあるとみる。

米4大ハイパースケーラー(アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、メタ)の四半期ごとの業績をみると、本業で稼いだ現金を意味する営業CFはこれまでの増加基調が足踏みとなっている。一方、これを上回る速いペースで投資CFの流出額が増加している。LSEGのデータに基づくと、4社の投資CFの流出額の合計は26年1―3月期に営業CFを上回った。

これが常態化するようなら、追加投資に向けて外部調達への依存度が高まりかねない。高金利環境の下では、資金調達コストの増加にもつながり得る。

りそなアセットマネジメントの戸田浩司シニアファ​ンドマネージャーは、現時点ではあくまでリスクシナリオとしながら「これまでの勢いで投資できないとなったとたん、ツルハシの需要は減退すると受け止められかねない」と話す。

今回の調整局面でも、FRBのタカ派傾斜を受けて「金利の先高観を警戒する側面もあっただろう」と野村の澤田氏はみている。

<上昇ペースはダウンも>

今年は米国でスペースXに続いて、オープンAIやアンソロピックといった超大型の新規株式公開(IPO)案件が控えている。DC投資向け資金調達を巡る市場の資金吸収力を左右しかねず、株式市場のボラティリティーが高まるリスクはつきまとう。

短期的には株価調整を挟みながらも一巡後の株高回帰が見込まれているが、中長期的には、ハイパースケーラーのCF構造の変化が常態化するかどうかが、AI相場の持続力の分水嶺となる。

仮に調整が入る場合でも「実態のビジネスが動いている限り、中期的な成長見通しは変わらない」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平​上席投資戦略研究員は話す。りそなAMの戸田氏は「ファンダメンタルズに明らかに(ネガティブな)兆候がなければ、調整時は買い場だろう」と話す。

一方、AI・半導体株高を受け、関連株の指数に対する影響度は高まってきた。調整が深まる場合、指数の下落を通じて損失を被る投資家の買い意欲が減退し得るとして「これまでのようなペースでの上昇は見込みにくくなるのではないか」と楽天経済研の土信田氏は話している。

(平田紀之 編集:橋本浩)

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