Akash Sriram Jemima Denham
[ニューヨーク/ロンドン 18日 ロイター] - 米国系宇宙スタートアップ企業が、人工衛星軌道上の人工知能(AI)データセンターへの保険適用について保険会社側と協議を進めているもようだ。
地球上の電力制約を回避するために人工衛星を連ねる形で設計された軌道上データセンターという構想は、今月上場を果たした米宇宙開発企業スペースXを率いる実業家イーロン・マスク氏がAI開発の未来像と提唱してから注目を集めている。
こうした構想を現実へ移そうとしている企業にとって、保険の確保は極めて重要と言える。高価なハードウエアやそれに伴うリスクに対する補償がなければ、事業を拡大するために必要な債券発行による資金調達が困難になるからだ。
スペースXやアマゾン・ドット・コム創業者ジェフ・ベゾス氏のブルーオリジンだけでなく、オービタルやスタークラウド、ローンスター・データ・ホールディングス、カウボーイ・スペースといったスタートアップ企業も、軌道上データセンター事業に乗り出す意向を示している。
ロイターが取材したブローカーや保険引き受け業者、宇宙企業の話によると、軌道上データセンターの補償に関する協議は既に実施されているものの、依然予備的な段階にある。
保険ブローカー大手のマーシュは、社名は明かさなかったものの、複数の企業が軌道上データセンターの将来的な補償内容を把握するために保険会社に接触していると明らかにした。マーシュの米国航空・宇宙プラクティスリーダー、パットン・クライン氏は「データセンターやデジタルインフラに力を入れている企業が、保険業界に支援を求め始めているのを目にしている」と語った。
ローンスターは最近、保険市場ロイズ・オブ・ロンドン向けにマーシュの事務所で説明会を開催し、約25社の保険会社が参加したと説明している。
スペースXとブルーオリジンはコメントの要請に応じなかった。
業界幹部や保険会社アクサXLによると、保険会社は既に打ち上げの失敗、衛星の故障、宇宙ゴミ(デブリ)、宇宙天気などの分野をカバーしており、世界の宇宙市場では年間約5億ドルの保険料が集まっている。
ただ、保険会社は軌道上のAIインフラに関するデータはほとんど持ち合わせていない。
保険会社向けにAIツールを開発するアップステージAIの米国責任者、ケイシー・ロー氏は「市場での議論は保険料をいくらにするかではなく、リスクをモデル化できるかどうかに集中している」と解説した。
オービタルのユーウィン・プーン最高経営責任者(CEO)は、課題の1つとして急速に進化するAI半導体の価値評価を挙げた。これらの半導体は宇宙の過酷な環境に対して脆弱さを示す恐れがあるからだ。
アトリウムの宇宙アンダーライター、デビッド・ウェイド氏は、軌道上データセンターの大規模な保険市場が形成されるには、ベンチャーキャピタルの支援を受けるスタートアップ企業がさらに規模を拡大する必要があると指摘する。
同氏は「初期の資金調達ラウンドを過ぎ、これらの企業の一部が負債を調達して拡大し始めるまでは、現時点での保険の必要性は非常に限られているだろう」と付け加えた。