Lewis Krauskopf Laura Matthews

[ニューヨーク 18日 ロイター] - ケビン・ウォーシュ氏が議長となった米連邦準備理事会(FRB)の新時代は、ウォール街に衝撃を与える形で幕を開けた。FRBが今後の金利動向に関するシグナルの発信を控える姿勢に転じ、投資家はボラティリティーの高まりに身構えている。

FRBが17日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利据え置きを決めたのは大方の予想通り。ただ議長として初のFOMCを取り仕切ったウォーシュ氏が示した新たな見通しと発言はトレーダーらの不意を突き、市場は数カ月以内の利上げの可能性を織り込む動きで反応した。

投資家が現在直面しているのは、ウォーシュ氏の下でより不透明になったFRBだ。ウォーシュ氏は声明からフォワードガイダンス(先行きの政策指針)を取り下げたうえ、情報発信のあり方を抜本的に見直そうとしており、データ解釈や物価動向への対応の修正も示唆した。そうした変化が市場に新たなボラティリティー生み出してもおかしくはない。

グレンミードの投資戦略担当バイスプレジデント、マイケル・レイノルズ氏は「ウォーシュ氏はスタートから全力疾走しており、FRBに関連するあらゆる事柄に自身の刻印を残そうとしている」と述べた。

<さらなるサプライズの予兆>

投資家は、新体制下でFRBの運営にどのような変化が起きるかを占う手がかりを得ようと、ウォーシュ氏の最初の動きを待ち望んでいた。

そこで即座に現れた変化の1つは、簡素化されたFOMC声明だった。声明では近い将来の行動指針が省略され、1987年から2006年までFRBの舵取りを担ったアラン・グリーンスパン元議長の形式を彷彿とさせる。

ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントのチーフ投資ストラテジスト、マイケル・アローン氏は「サプライズや失望を与えることを嫌った、史上最も透明性の高いFRBから、事前に示されたフォワードガイダンスに縛られたり拘束されたりすることを望まない、透明性の低いFRBへと移行しつつある」と指摘した。

ウォーシュ氏は、金融市場は政策担当者によるデータの見方を予測しようとするのではなく、独自の経済分析に基づいて証券価格を形成すべきだとも述べた。

野村の先進国市場担当チーフエコノミスト、デービッド・サイフ氏は、過去20年間は市場が非常に高い精度でFRBの動きを織り込んできたと説明。「情報発信の簡素化は、長らく続いてきた『FRBが市場を驚かせることはほとんどない』という考え方が消滅し得ることを最終的に意味する可能性がある」と付け加えた。

またウォーシュ氏はバランスシート、市場との対話、データソース、生産性と雇用、そして物価動向対応の枠組みを含むFRBの運営全般に関する見直しを発表した。

ニューバーガー・バーマンのポートフォリオマネジャー、ジョセフ・パーテル氏は「ウォーシュ氏が語ったこと、そしてあえて語らなかったことの両方が、今後のFRBの情報発信手法が目に見えるほど大きく変化することを、市場とFRBウオッチャーに示した」と語った。

<利上げに備える市場>

FRBがタカ派姿勢を強めれば、企業や消費者の借り入れコストを押し上げ、ドル高と債券利回りの上昇を招くことで、長期にわたる株価上昇に水を差す恐れがある。

市場は今年初め時点でさらなる利下げを織り込んでいたものの、2月下旬の米国・イスラエルとイランの戦闘によりエネルギー価格とインフレが急騰したことで状況は一変。足元では年内に利上げがあるとの予想に切り替わった。最近のデータに基づくと、物価上昇率はFRBが目標とする2%を大幅に上回って推移している。ウォーシュ氏は17日にこの目標を再確認した。

FOMCメンバーの最新の政策金利見通し分布(ドットプロット)では、9人が年末までの利上げを想定している。クリアブリッジ・インベストメンツのシニア投資戦略アナリスト、ジョシュ・ジャムナー氏は、記者会見におけるウォーシュ氏の物価安定の強調は、市場にタカ派的と受け止められたと述べた。

CMEのフェドウオッチによると、17日の金利先物は9月FOMCでの利上げ確率を5割超と織り込んでいる。

トロントのマッケンジー・インベストメンツの債券チーフストラテジスト、ダスティン・リード氏は「9月に利上げがある可能性は極めて現実味を帯びてきた。もし6月のデータが強ければ、早ければ7月にも利上げが行われる展開もあり得る」と警告する。

17日には米国株が下落、金融政策の変化に敏感に反応する米2年物国債利回りは昨年2月以来の高水準に達し、ドルは全面高となった。

もっともこうした市場の反応は行き過ぎで、利上げが差し迫っているかは疑問だとの声も聞かれる。

その根拠の1つは原油価格の下落だ。メットライフ・インベストメンツ・マネジメントのチーフ市場ストラテジスト、ドリュー・マトゥス氏は「(ウォーシュ氏は)ガソリン価格がいずれ総合ベースの物価上昇率を押し下げることを理解しているため、人々が騒ぐほど必ずしもタカ派的だとは思わない」と述べた。

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