Balazs Koranyi Leika Kihara
[フランクフルト/東京 18日 ロイター] - イランでの戦争に起因する物価高騰は、もはや世界中の中央銀行が見過ごすことができないレベルに達しており、米連邦準備理事会(FRB)を含めて多くの中銀が物価上昇を抑えるための利上げの可能性を示唆するか、現実に利上げしている。
エネルギー価格を押し上げたこの戦争に関する暫定的な和平合意が維持されたとしても、インフラへの多大な被害や備蓄石油の枯渇に伴って、エネルギー市場の正常化は来年までずれ込む恐れがある。
米国や英国など一部の主要国が2021年から22年にかけて起きた価格ショック後に物価上昇率を目標値に戻せなかったことを踏まえると、これは特に深刻な問題と言える。5年間にわたって物価上昇率が目標を上回って推移している事態で問われているのは、中銀の信頼性だ。
FRBは17日に引き締め方向への政策修正の可能性をにじませ、イングランド銀行(英中央銀行)の政策担当者は「一時的なショックは無視すべきだ」という従来の金融政策理論をいったん脇に置いて利上げについて議論した。欧州中央銀行(ECB)と日銀は、既に利上げに踏み切っている。
特に注目されるのは、ウォーシュ新議長の下で初の連邦公開市場委員会(FOMC)を開いたFRBの姿勢の変化だ。
今年初め時点で投資家は年内にFRBが2─3回利下げすると予想していた。ところが現在、市場は2回の利上げを織り込んでおり、これは中銀が実際に動く前から、既に金融環境が引き締まっていることを意味する。
金融市場は世界最大の中央銀行であるFRBの動向を手掛かりにするため、これが他の中銀へのドミノ倒し的な波及効果を生む可能性がある。
TSロンバードのダリオ・パーキンス氏は「ホルムズ海峡の航行が再開される見通しとなったことで、世界の利上げサイクルは終わったと考えたくなる。だが、その評価は誤っている。基調的な物価上昇率は依然としてあまりに高く、成長は再び加速する見通しだ」と述べた。
<トランプ氏の要求通らず>
FRBは17日、利上げを明確に選択肢として掲げる見通しを示し、そうしたメッセージを補強した。
キャピタル・エコノミクスのスティーブン・ブラウン氏は「大局的に見れば、FRBは利上げに前向きなように見える」と語り、FRBのインフレ見通しだけを見れば、すでに利上げに動いていてもおかしくないと付け加えた。
トランプ米大統領が求めてきた利下げが、近いうちに実現しそうにないのはほぼ間違いない。とりわけウォーシュ氏がFRBの運営全体を見直すための複数の委員会を設置する計画を立てている以上、なおさら早期利下げは難しい。
ウニクレディトはリポートで「ウォーシュ氏の物価情勢に関する言い回しは、われわれの予想以上にタカ派的だった。FOMCは各委員会からの答申を待つ間、動く動機をほとんど持たないだろう」と述べた。
<世界中に及ぶ影響>
この「FRB効果」は、その後世界中に波及することになる。
18日の急激な円安は、為替介入観測を再燃させ、日銀に対する追加利上げの圧力になるだろう。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「タカ派寄りのFRBがもたらす円安は、日銀の利上げペースを加速させる可能性がある」と述べた。
また稲留氏は「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)でみた予想インフレは上昇したのち高止まりしており、その主因のひとつが円安。この傾向が続けば日銀への利上げ圧力となり続ける可能性がある」と指摘した。
英中央銀行は18日の会合で政策金利を据え置いたものの、利上げのメリットについて議論した。一方ノルウェー中銀は物価上昇率が高過ぎると警告し、年内に借入コストが引き上げられる可能性が高いとの見解を示した。
他の中銀ほど英中央銀行は明確に利上げを示唆しなかったものの、同行のチーフエコノミストが利上げの主張を続けていることもあり、市場は年内の利上げを完全に織り込んでいる。
先週、主要中銀として初めて利上げに踏み切ったECBも、今週になって政策担当者から追加的な利上げを排除しないという明確なメッセージが発せられた。