Kentaro Okasaka Yuka Obayashi

[東京 18日 ロイター] - 日本製鉄の森高弘副会長は、昨年6月に買収した米鉄鋼大手USスチールの今期利益が予想を上振れそうだと明らかにした。鋼材価格が高水準で推移している上、需要も拡大しており、買収前より米国の市場は堅調だとした。いずれ利益が3ー4倍に拡大する可能性があるとの見方を示した。

買収完了から18日で1年を迎えるのを前に報道各社の取材に応じた森氏は、「昨年(2025年度)は一過性の要因で若干のマイナスで終わったが、今年は(実力ベースで)1000億円を超える利益を出せると確信を持ってお話できるようになっている。非常に力になってくれるし、クローズ(買収)できて良かったなと思っている」と語った。

森氏は米国市場について、「非常に良好」と説明。アジアの鉄鋼市場が安価な中国製品の輸出で打撃を受けているのに対し、高い関税に守られた米国の熱延鋼板価格は1トン当たり1200ドル超と2倍以上の水準で推移している。この市況を生かすため、USスチールは長く休止していたイリノイ州の高炉を3月に再稼働した。現在は最大能力で操業しているという。「米国では買収を検討していた当時と比べてもマーケットが拡大している」とし、「ゆくゆくは3000億ー4000億円規模の実力損益を出せる会社に確実になっていくと思う」と述べた。

底堅い鋼材市況は追い風になる一方、インフレと人手不足の環境下で設備投資を進めるのはリスクが伴う。森氏はUSスチール買収に乗り出した2年前から予測していたことだとし、影響を軽減するさまざまな措置を考えてきたと語った。

USスチール買収は、米経済へのメリットを訴える日鉄と安全保障への影響を懸念した米政府との攻防の末に実現した。何度も訪米した森氏は「海外で事業を行っていく上で、その国々の政官との連携がいかに重要かということを感じた」と振り返った。「国同士が産業政策を競う時代になっており、政策を作っている政治家や官僚が何を考え、どういうことを求めているのかを分からずして事業ができない状況だ。その巧拙が事業に非常に大きな意味を持ってきている」と話した。

日鉄側は買収に際し、米政府と締結した「国家安全保障協定」に基づき、USスチール経営の重要事項について拒否権を有する「黄金株」を米政府に発行している。森氏は「この1年間で(トランプ政権の)介入と言えるようなものは一切なかった。障害になって事業の意思決定が邪魔されることもなく、立ち往生したり困ったりしたことはなかった」と説明した。

森氏は、日本国内の鉄鋼需要がピーク時から大きく減少している中「成長を海外に求めるしかない。ほかに選択肢はない」と強調。「グローバル4極」と位置付ける米国とインド、タイ、欧州を核に海外戦略を推進し「世界ナンバー1の鉄鋼メーカーに返り咲くことを目指していきたい」と語った。一方、「今の鉄鋼業で最大のリスクは中国リスクだ」と指摘。中国国内の鉄鋼需要が伸び悩む一方、生産能力は変わらず輸出圧力が高まっている上、品質面でも中国メーカーが急速に追い上げているためタイなどASEAN(東南アジア諸国連合)市場は「影響なしではいられない」と警戒感を示した。

※インタビューは11日に実施しました。

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