Takahiko Wada Kentaro Sugiyama

[東京 16日 ロイター] - 日銀の内田真一副総裁は16日、金融政策決定会合後の会見で、現在の金融環境は引き続き「緩和的」との認識を示し、今後も利上げを継続していく方針を示した。「当面は中東情勢の展開が金融・為替市場や経済・物価に与える影響を注視する必要がある」とした上で、基調物価が2%に近づいていることを踏まえれば「2%程度の水準で安定させていく観点が必要になる」と説明した。

日銀は今回の会合で政策金利を1.0%に引き上げることを賛成多数で決定した。政策委員からは50ベーシスポイントの大幅利上げを求める提案はなかった。

内田副総裁は利上げの理由について、基調的な物価上昇率が2%の物価安定の目標を超えて上振れていくリスクがあると指摘。物価安定目標の持続的・安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整することが適切と判断したと述べた。また、中東依存度の高い原材料の代替調達が進展するなど、4月会合時点で警戒していた経済の下振れリスクが低下したことも大きかったとした。

その上で「政策金利の変更後も、緩和的な金融環境は維持されるため、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えている」と語った。

米国とイランの和平合意は「望ましい動き」とする一方、「依然として不透明な状況は続いている」とし、経済・物価への影響は「慎重に見極めていく必要がある」と述べた。また、リスク要因として為替相場の変動をあげたことについては、為替は経済・物価に影響を及ぼす重要な要素であり、為替変動が基調物価に与える影響が強くなっていると指摘した。

<中立金利の推計は「あまり使えない」>

今回の利上げで、政策金利は日銀の自然利子率の推計値に基づく中立金利1.1―2.5%の下限付近となったが、内田副総裁は、中立金利の推計値には相当なばらつきがあり、金融政策を実践する立場からすれば「あまり使えない」と指摘した。その上で、短期金利を上げていく過程で金融環境の変化を点検して中立金利の水準を探りながら、金融緩和の度合いを調整していくしかないと述べた。

また、声明文から「実質金利がきわめて低い水準」との表現が削除された点については、実質金利との距離感を示すより、「金融緩和の度合い全体を評価し、それを説明する方がより適切」と説明し、コミュニケーション手法の見直しであるとの認識を示した。

今回は植田和男総裁が欠席する中での利上げ決定となった。内田副総裁は植田総裁が決定会合に提出した意見について詳細を明かさなかったが「大きな考え方はこれまで総裁が話していた通り」で「想像のつく範囲」と述べた。

植田総裁は3日の講演で物価の上振れリスクを強調した。植田総裁の意見は今後公表される決定会合の「主な意見」などに掲載される可能性がある。

一方、高市早苗政権の経済政策との整合性について、内田副総裁は「整合的」と述べた。政府が中東情勢を背景とした景気下振れリスクへの対応や物価高対策に注力している一方で、日銀は物価の上振れリスクに対応するために利上げを行ったと説明し、それぞれの役割に沿った政策対応を行っているとの考えを示した。

<国債買い入れ、2兆円の継続期間は「決めていない」>

日銀は国債買い入れについて、27年4月以降は減額を停止し、月2兆円程度の買い入れを継続することも決めた。

内田副総裁は2兆円という規模感について「市場参加者の意見を聞いた上で独自に判断した」とし、政府への配慮との見方を否定した。その上で、市場機能が改善してきて国債の買い入れを一段と減らす必要性が後退したことや、銀行や個人投資家が日銀に代わって国債保有を十分に増やしていくには時間を要することを挙げた。

毎年行ってきた国債買い入れ計画の中間評価を今後は行わないが、内田副総裁は「2兆円程度をどれだけ続けるか、前もって決めているわけではない」と述べた。国内投資家のポートフォリオの変化など「状況が変わってくれば、予見可能性にも配慮して見直すことはありうる」とした。

<「緊急登板」の内田副総裁、外為市場の反応は限定的>

決定会合に欠席する植田総裁に代わって内田副総裁が会合後の記者会見に臨むことで、市場では、先行きの利上げスタンスについての内田副総裁の発言が「ハト派」と受け止められれば円安に振れる可能性が警戒されていたが、外為市場の反応は限定的だった。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎・主席研究員は、内田副総裁は会見を「慎重にかつ無難にこなした印象だ」とコメントした。内容は事前の声明とほぼ同じだったが、「改めて金融引き締めスタンスを維持していくことが強調された」とした。

小林氏は、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策次第でドル高が加速するリスクがあり「仮にFRBが利上げ方向で動けば、日銀も次の利上げを前倒しする可能性がある」との見方を示した。

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。