Kentaro Sugiyama
[東京 16日 ロイター] - 日銀が公表した金融政策決定会合の声明文は、明確なタカ派シグナルこそ打ち出さなかったものの、利上げ継続路線を維持する姿勢を改めて示した。政策金利が1%に到達し、金融市場では中立金利の下限に接近したとの見方が広がる中、今後の利上げペースや到達点が焦点となっている。
「これまでの金融政策運営のスタンスを変えないことが示された」。三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストはこう指摘する。「基調的な物価上昇率が2%に近づいている」との認識など、4月の展望リポートの文言が維持された点を踏まえ、「これまで通り半年に1回程度のペースでの利上げを今のところ想定してよいのではないか」との見方を示した。
稲留氏は、次の利上げ時期について「12月が基本線」とし、今後のデータ次第で前倒しや後ずれが議論されるとみる。
政策金利が1%に引き上げられたことで、日銀が推計した中立金利の下限(1.1%程度)に近づいたとの見方もある。稲留氏は「1.25%への引き上げに現時点で高いハードルが示されたわけではない」とし、少なくとも次の利上げまでは手を緩めることはないと話す。
SBI新生銀行の森翔太郎シニアエコノミストは、前回までの「現在の実質金利がきわめて低い水準にある」との記述が削除され、「現在の金融環境が緩和的である」との表現に修正された点に注目する。政策金利が中立金利の下限に近づく中、「実質金利を軸とするコミュニケーションから距離を置いた」とみる。
一方、従来の「きわめて」との表現が利上げ余地の大きさを意識させていたが、今回の修正ではそうした含意がなくなった、と森氏はいう。「利上げのタイミングやペースに関する文言にも変更はなく、声明文から読み取れる先行きの利上げペースや到達点に関する示唆は限定的だった」と語った。
今回の会合では、浅田統一郎審議委員が、中東情勢の影響について物価の上振れリスクよりも生産・雇用の下振れリスクの方が大きいとして、今回の利上げに反対した。ドイツ証券の小山賢太郎チーフエコノミストは、この反対について「今後任命される委員も同様に利上げに反対することを想起させる」と指摘する。
政策委員会では次回7月会合から中川順子氏に代わり、佐藤綾野氏が加わる予定で、人事面の変化も今後の政策判断に影響を与える可能性がある。小山氏は、午後3時半からの内田真一副総裁の会見に関し、「『実質金利はきわめて低水準』との表現が削除された理由や、利上げペースに関する示唆の有無を確認したい」としている。
事前には、タカ派色を強めて円安進行に歯止めをかけるとの見方があったが、結果的に声明はバランスを重視した内容となった。日銀は急激な引き締めシフトは避けつつ、物価上振れリスクに対応するための利上げ継続スタンスを維持した格好だ。今後は中立金利圏に本格的に踏み込む中で、利上げペースやコミュニケーションの変化が問われる。
(杉山健太郎 編集:橋本浩)