[ロンドン 15日 ロイター] - 米国とイランが戦闘終結とホルムズ海峡再開の条件について枠組み合意に達し、石油供給が再開するとの期待から原油価格は急落した。
しかし業界関係者によると、原油生産量と製油能力が戦闘前の水準に完全回復するには数週間、数カ月、あるいは数年もかかる可能性がある。
以下は今回の暫定合意がエネルギー市場にもたらす主な影響の検証。
◎合意で直ちに変わること
トランプ米大統領は、イランが数カ月間実質的に封鎖してきたホルムズ海峡が19日に再開されると述べ、米国によるイランの港湾封鎖について解除を命じたことも明らかにした。
一方、イランのガリババディ外務次官は、60日間の停戦期間中に、イランへの制裁緩和を含め、より広範な紛争の包括的合意に向けて交渉が行われると述べた。
◎石油生産の再開スピード
イラク、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)を含む中東産油国は、ホルムズ海峡の実質的な閉鎖に伴い、日量数百万バレルの原油生産を停止していた。
国際エネルギー機関(IEA)の最新報告書によると、停止している石油生産量は日量1400万バレル以上と、世界需要の約14%に相当する。
事情に詳しい筋によると、イラクなどの一部の油田は再開決定から1週間未満で生産を再開できるが、その他の油田ではずっと長い時間がかかる。
ウッドマッケンジーのアナリストチームは「油田操業会社が慎重かつ管理された方法で段階的に増産すると仮定した場合、ホルムズ海峡の閉鎖で影響を受けた油田は3カ月以内に従来の生産量の70%、6カ月以内に90%まで回復できそうだ。ただし、残りの日量100万バレル程度の回復には相当長い時間がかかるだろう」と分析した。
◎製油所がボトルネックになる理由
業界監視機関のIIRによると、イランの戦争によって5月7日時点で日量最大352万バレルの製油能力が停止しており、これは世界全体の約3.5%に相当する。一部のプラントは損傷を受けている。
予防措置として停止していたプラントは2週間ほどで再開できるが、損傷したプラントの再開にはもっと長い時間がかかる。
ビトル・バーレーンの調査責任者、ベーダー・ノールディン氏は今月、ペルシャ湾岸の製油所は40―60日以内に稼働率を約90―95%まで戻せる可能性があると述べた。
調査会社ライスタッド・エナジーによると、中東全体の修復費用は約460億ドルに達する見込みで、複雑さと被害の程度を考えると、製油・石油化学関係の施設がその最大部分を占める見通しだ。
◎天然ガスへの影響
紛争の初期段階において、カタールなどの主要な液化天然ガス(LNG)施設は攻撃を受けて生産を停止、または操業を縮小した。
再開を決定してから天然ガスを極低温の燃料にしてフル稼働に達するまでには約2週間かかる。
天然ガスの液化プロセスにおいて、ガスをマイナス162度まで冷却して液体にする冷却工程は最も重要だ。熱衝撃を避けるため、意図的にゆっくりと進められる。また、ガスを液化する「LNG生産トレイン」を全て同時に再開することはできず、順を追って稼働する必要がある。
カタールの国営エネルギー企業カタールエナジーは、クウェートとバーレーンからの需要を満たすため、戦闘中も3つのトレインの稼働を維持していた。
しかしフル稼働への復帰には何年も要する見通しだ。カタールエナジーの最高経営責任者(CEO)は、イランの攻撃によってカタールのLNG生産能力の17%が消失し、回復には最長で5年かかると述べている。
◎長引く在庫立て直し
供給寸断の結果、世界の石油在庫は減少しており、通常の水準に戻るには長期間、場合によっては数年間を要する可能性がある。
米エネルギー情報局(EIA)によると、主要国の備蓄量は、中東からの供給途絶によって記録的なペースで減少しており、少なくとも2003年以来の低水準に近づいている。
投資会社ナインティ・ワンの天然資源責任者、ポール・グーデン氏は「流通が完全に正常化するまでには数カ月かかるだろう。当社の推計では、紛争開始以来、世界の石油在庫は10億バレル以上減少した」と述べ、10億バレルは現在の価格で830億ドル以上に相当すると説明。「従って、各国政府が在庫の再構築に努め、さらなる地政学的リスクから身を守ろうとする中で、石油市場は今後数年間にわたり『後遺症』に悩まされるだろう」と語った。