同施設の建設は、サイバー犯罪が急増する実態を映し出している。
FBIの統計によると、2025年、アメリカのサイバー犯罪による損失額は200億ドルを超え、過去最高を記録。前年に比べると26%増だった。
ランサムウェアは依然として、重要インフラ組織を標的としたサイバー攻撃の中で最も報告件数が多かった。
攻撃の頻度も重大性も増大する中で、捜査機関は没入型の訓練環境を重視するようになっている。
訓練施設では実際の捜査を可能な限り現実に近い環境で体験できる。具体的には次のような訓練が可能。
- 模擬住宅に入り、接続された機器のうちどれを押収するかを判断
- 企業に対して捜索令状を執行し、稼働中のネットワークを分析
- 車両やサーバからのデータ抽出
- 実際の企業環境と同じ、狭くてうるさいデータセンター内で作業
ビーチボードによると、意図的に不快な環境を設定した場所もある。データセンターは「寒くて狭くてうるさくて惨めな」実際の労働環境を再現しているという。
同施設では2025年2月の開設以来、FBIや連携する捜査機関の捜査員など1400人以上が訓練を行った。
FBIは同施設をサイバー演習にとって必要な進化と位置づける。デジタル脅威は今や現実世界に影響を及ぼすようになり、シナリオに基づく物理的な備えが求められるようになった。
ただしテッククランチによると、訓練内容の一部、特にロックされた端末や暗号化された端末(スマートフォンやノートパソコンなど)からデータを抽出するツールの使用に対しては批判の声もあり、サイバーセキュリティ業界で論議が続いているという。
そうしたツールで使われる脆弱性は秘密にされ、端末のメーカーには開示されない。
結果としてその脆弱性が捜査当局だけでなく、それを発見したハッカー集団などに悪用される恐れもある。
FBIの模擬タウンは、政府のサイバー攻撃に対する備えがシフトしつつある表れだ。サイバー攻撃は単なるデジタル事案ではなく、必要不可欠なサービスや日常生活を混乱に陥れかねない事件としての対応が必要になった。
FBIは管理された環境内に本格的な街を作り出すことで、データ窃盗を越えて物理世界に影響を及ぼす攻撃に対し、捜査官の対応能力を向上させることを目指している。
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