Sophie Yu Helen Reid Alessandro Parodi
[北京/ロンドン 8日 ロイター] - 中国発の電子商取引(EC)は、輸出を通じて稼ぐ力が失速している。航空燃料費の急騰と、中東紛争に関連した欧米の低所得層の需要低迷が「Temu(テム)」や「Shein(シーイン)」、「AliExpress(アリエクスプレス)」といった大手オンラインプラットフォームの利益を脅かしている構図だ。
中国の工場から5ドルのドレスを世界中の買い物客に空輸するという事業モデルは、トランプ米大統領が昨年関税を導入し、少額貨物に対する関税免除を廃止したことで、既に圧力を受けていた。
データや業界関係者への取材に基づくと、中東の戦争に起因する物流コストの急騰がさらなる負担となっており、DHLエクスプレスなどの配送業者は高額な燃料サーチャージを課している。
ルクセンブルクを拠点とするコンサルティング会社、トレード・アンド・トランスポート・グループが中国の税関データを分析したところ、過去6年間で急増した中国の低価格EC輸出は、4月に前年同月比10.9%減の98億1000万ドルとなり、5カ月連続で前年実績を下回った。
<消費者へのコスト転嫁>
中国南部深センを拠点にテムで婦人服を販売するダイアナ・チャオ氏は、衣類1着当たりの送料が平均1ドル上昇したため、販売価格を2ドル引き上げたという。
チャオ氏は「最終的な負担は結局、消費者が負うことになる」と語る。利益率を守るために値上げが必要だったとした上で、売上高はわずかに減少したが、今のところ配送体制を変更する必要性は感じていないと付け加えた。
輸出額の落ち込みは、コストによる圧迫だけでなく、低価格ショッピングプラットフォームの高度成長時代が終わりを迎えた可能性を示唆している、というのがアナリストや業界関係者の声だ。
トレード・アンド・トランスポート・グループのマネジングディレクター、フレデリック・ホースト氏は、各社は全ての商品を中国から直接空輸するのではなく、商品を一括して倉庫に移動させ、現地から発送する方式へと移行しつつあるようだと述べた。
ホースト氏は「商品価格に対する航空運賃の比率を考えれば、それは合理的だ。300-400グラムのトップスを購入する場合、航空運賃がコストの60%を占める段階に達している」と説明する。
シーインは欧州での倉庫能力を拡大しており、先月には英中部バーミンガム近郊のキャノックに3番目の倉庫を開設した。
アリエクスプレスを所有するアリババグループの広報担当者はロイターに「世界的な輸送コストの変動にかかわらず、消費者にはコストパフォーマンスの高い価格を維持し、出店者と消費者には安定した環境を提供することに引き続き注力する」と強調した。
シーインとテムは、航空運賃が事業に与える影響についての質問に回答しなかった。
<市場成熟に伴う需要減退>
輸出額が依然として2年前よりもはるかに高い水準にあり、昨年の初めは米国の関税導入を控えた大幅な駆け込み需要が見られたのは確かだ。
しかしながら、シーインやテムが既に大きな市場シェアを獲得していることや、ガソリン価格の急騰が米国や欧州の家計を直撃していることから、過去数年のような成長に戻ることは難しくなるだろう。欧州連合(EU)も7月1日から、少額の域内宛て小包に対して3ユーロの手数料を課す予定だ。
中国の貨物転送業者の幹部は、航空貨物運賃の影響もあるが、低価格プラットフォーム自体が低成長期に入っており、インフレのために海外の消費が減少していると認めた。
国際物流の運賃データや予約プラットフォームを提供するフレイトスの調査責任者を務めるユダ・レバイン氏は、航空燃料価格の影響で航空貨物運賃は高止まりする公算が大きく、中東での戦闘が終結したとしても運賃下落には時間がかかるだろうと予想する。
ドイツに拠点を置く国際物流企業ヘルマン・ワールドワイド・ロジスティクスのマルティン・ハビスライティンガー航空貨物最高運営責任者は「コストが非常に高いまま推移するか、さらに上昇すれば、企業は他の輸送手段に切り替えるか、出荷の一部を控える可能性がある」との見方を示した。