Noriyuki Hirata

[東京 8日 ロイター] - 8日の東京市場で日経平均は一時3000円超安に下げ幅を拡大した。前週末の米国市場で予想を上回る雇用統計の結果を受けて金利先高警戒が強まって人工知能(AI)・半導体株を中心に米国株が大きく下落し、国内でも関連株を中心にリスク回避の売りが優勢となっている。一方、現時点では持ち高調整が中心で、株安へのトレンド転換ではないとの見方もある。

ソフトバンクグループや東京エレクトロン、アドバンテストなどAI・半導体関連株が軒並み大幅安となっている。前週末の米国では、エヌビディアが6.2%安、AMDが10%超安と、半導体大手が軒並み急落し、ハイテク比率の高いナスダック総合は4%超安、フィラデルフィア半導体指数(SOX)は10%超安と大きく下げた。国内市場でも連想売りが勢いを増している。

米AI・半導体株は過去数週間で急騰し、5月の米雇用統計が予想外に強い内容となったことが株価調整の引き金を引いた形となった。米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比17万2000人増と、市場予想(8万5000人増)の倍以上だった。

米FF金利先物(12月限)は雇用統計発表直後に急落し 、米国での年内利上げの観測が強まった。長期金利の上昇懸念が、ハイテク・グロース株の割高感を意識させた。イランがイスラエルに向けてミサイルを発射したことが伝わり、米WTI原油先物は1バレル=94ドル台に上昇していることも投資家心理の重しとなっている。米スペースXによる超大型の新規株式公開(IPO)が今週末に見込まれる中、換金売りが出やすいとも意識されている。

一方、東証プライム市場での値下がり銘柄数は6割程度にとどまり、サービス、小売など内需株の一角が物色される様子も確認される。日経平均とTOPIXの比率を示すNT倍率は16.6倍付近に低下している。

為替市場では、ドル/円は160円前半で小動きとなっている。「金利上昇がドル買いにつながっているが、円売りは他通貨に比べると為替介入への警戒感からかなり限定的となっている」(あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジスト)という。国内の長期金利は一時2.710%に4.5ベーシスポイント上昇した。

<「トレンド転換でない」との見方も>

今週は米国で5月消費者物価指数(CPI、10日)や、5月生産者物価指数(PPI、11日)の発表を控えており、目先の日経平均は不安定な値動きが継続する可能性がある。日経平均ボラティリティー・インデックスは先週末の28台から41へと急上昇している。

足元の調整で損失を被った投資家も多いとみられるとして「センチメントの回復には少し時間がかかるかもしれない」と松井証券の窪田朋一郎チーフマーケットアナリストは話す。

もっとも、足元の株安はAI・半導体関連株に過度に偏った持ち高調整の範囲内で、必ずしも下落トレンドへの転換ではないとの見方もある。松井の窪田氏は「生成AIに対する巨額投資計画が変わったわけではないため、半導体関連株を下値で拾う動きも出てくると予想される」ともみている。

ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、米国株の急落は「(史上最高値圏にある)高所恐怖症の中、一部の投資家が雇用統計を利益確定売りの口実にしたのだろう」との見方を示す。市場の過熱感は、過去に株価が急落した「令和のブラックマンデー(24年8月)」や「ディープシークショック(25年1月)」の直前に近い状態にあり、ちょっとした悪材料に敏感に反応しやすかったという。

堅調な米雇用統計はむしろ、グッドニュースと井出氏は指摘する。足元の米経済はインフレだとしても、強い雇用統計によってファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は良好なことが示唆された形で、インフレと景気後退が同時進行するスタグフレーションが警戒された24年8月の急落時などとは状況が異なるとの見方だ。

不安定な地合いの中、日経平均は場合によっては6万円前後への下落はあってもおかしくないとの見方を井出氏は示す一方、「下落トレンドに向かうというより、短期的な値幅調整だろう。買い下がるスタンスでいいのではないか」と話している。

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。