キューバの体制はなぜ今も存続できている?
さて、ここまで現代キューバ史を細かく検討してきたが、やはり大きな疑問が残る。社会実験に失敗した小さな島国で、他国からの巨額の支援がなければ存続できなかった体制が、なぜこれほど長期にわたって、世界各地に影響を及ぼすことができたのだろうか。むろん、単純明快な答えはない。ただし、よく言われる説はいくつかある。
1つは、ひげ面でオリーブ色の軍服に身を包んだ若き山岳ゲリラという象徴的なイメージの強烈さだ。革命後のキューバはソ連の従属国家に成り下がったが、それでもチェ・ゲバラの肖像に代表される革命の闘士の魅力が色あせることはなかった。
2つ目は社会政策、とりわけ医療と教育の充実という(少なくとも表向きの)成果だ。20世紀の後半に独立を果たした中南米やアフリカの諸国では、一般に医療と教育の普及が遅れていた。しかしキューバは素晴らしい成果を上げているように見えた。これぞ革命のたまもの。そういう見方には一定の説得力があった。
確かに体制は抑圧的かつ反民主的で、経済は麻痺し、多くを外国からの支援に依存しているが、アメリカによる経済封鎖に苦しみながらも医療と教育の水準を劇的に向上させた。これだけでも、社会正義を重視する進歩派の人々がキューバに憧れを抱くには十分だった。
実際はこの60年間、中米の一部やハイチ、ボリビアを除き、中南米諸国の大半は教育・医療の両面で多大な進歩を遂げている。平均就学年数は10年に達し、学校の大半は無償だ。識字率も高く、若者の3分の1以上が高等教育に進む国もある。教育の質には議論の余地がありそうだが、それはまた別の問題だ。