米シカゴで開催された世界最大のがん学会で、進行した膵臓がんの生存期間をほぼ2倍に延長するという最終段階の臨床試験データが発表された。現代医学において最も治療が困難とされるがんの1つに対して劇的な効果を示したこの新薬に、会場を埋め尽くした腫瘍内科医たちから1分近くに及ぶスタンディングオベーションが送られた。
この画期的な経口薬「ダラキソンラシブ」は、5月31日の米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で披露された。発表を行ったのは、ダナ・ファーバーがん研究所ヘイル家族膵臓がん研究センターの責任者であるブライアン・M・ウォルピン博士だ。
この薬は、膵臓がん症例の90%以上で腫瘍の増殖を促している「RAS」と呼ばれる変異タンパク質を阻害する。このタンパク質は、過去数十年にわたりあらゆる治療の手をすり抜けてきた標的だった。
ウォルピン博士が、1日1回の服用で過去に治療歴のある転移性膵臓がん患者の死亡リスクが60%減少したことを示すスライドを映し出すと、満員の会場は歓声と拍手に包まれた。
インターマウンテン・ヘルスケアの消化器腫瘍学責任者であるマーク・ルイス博士はX(旧ツイッター)に、「がん治療における歴史的瞬間に立ち会っていると感じられることは滅多にないが、ついにRAS標的治療の時代が到来したと実感している」と投稿した。
AIを活用して科学的発見を行うステマティック・ラボの共同創設者、サミュエル・ヒューム博士は、「ダラキソンラシブの全データ発表に対して送られたスタンディングオベーションは、これまで目にした中で最も素晴らしい光景の一つだ」と投稿した。
この新薬は、ベン・サス元米上院議員が米報道番組『60ミニッツ』に出演した際、同薬の服用によって痛みが和らいだと語ったことで、一般の間でも大きな注目を集めた。
AP通信の報道によると、未承認薬を早期に提供する特別アクセスプログラムが始まったことで、現在、腫瘍内科医のもとには患者からの問い合わせが殺到しているという。