医師たちは従来、病気の時に僕たちを助けてくれるからという単純な理由で、世論を味方につけることができた。
だが、医師は無私で、働きすぎで、賃金が見合っていないという見方には誇張がある。医師たちがあまりに疲弊しているから私立病院で定期の副業をしている医師はたったの50%しかいない、という話はあまり聞かない。
ストが患者の治療に影響を及ぼすなかで、人々の本能的な同情は今や薄れつつある。世論調査では、医師のストに反対する人が過半数となり、支持する人は3人に1人以下。NHSは国内最大の雇用主(世界でも最大級)の1つであり、だからこそ巨大な支持層がいる(NHS当事者に加えて、その家族、友人など)ということを考えると、これはかなり低い数字だ。
若手医師が非常に多忙で、賃金も素晴らしく良いわけではない、というのは否定できない。長年の学費で多額の借金も背負っている。だが、それは大きな構図を見落としている。
彼らは、経験年数に応じた賃上げが保証され、資格を取得すれば昇給し、解雇のリスクはほとんどない……という極めて明確なキャリアパスにおいて、今はいっとき厳しい段階にいるだけだ。
そのキャリアの頂点にあるのがコンサルタント医師の地位で、そこまで行けば「達成」だ。残業代抜きで年10万ポンド(約2150万円)。最後には「確定給付型」の年金もある。これは極めてまれで、非常に手厚く、しかも60歳から受け取れる。案の定、NHSの医師の平均退職年齢は60歳を少し下回る。大多数の人々の年金受給開始年齢より7年早い。
イギリスの医師会は労組と化した
ストの間、病院はスト中の若手医師の穴を埋めるため、コンサルタント医師を時給100ポンド超、場合によっては200ポンド超で投入する。連続のダブルシフトなら4000ポンドになる可能性もある。
多くの人にとっては夢見ることもできない、とんでもない臨時収入だ。確かなことは分からないが、先輩たちは後輩に、自分のために立ち上がれと励ましているのではないかと思う。権利のためにストを頑張れ!と。
何十年も前のあの教師が言っていたのは、労働組合を必ずしもこの国で唯一の頑迷で利己的な組織と見るべきではなく、高度専門職の層に対する一般的な見方にも疑問を持つべきだ、ということだった。
僕の人生の大半において、BMA(イギリス医師会)は公衆衛生の向上を目指す慈善的な組織のように受け止められていた。最近では、その実態通りに言われるようになっている――「医師労働組合」だ。
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