クマは学習能力が高く警戒心の強い動物
そうした場合、正体がよくわからない相手(人間)が激しく動いていれば、クマはこいつを何とかしなければいけないと考え、前足で激しく叩くなどの行動につながる。そういう意味で、やはり不意に遭遇した場合、クマの前で急な動きをせず、クマをパニックにさせないことがとても重要である。(133ページより)
他にも本書ではクマから身を守る方法が多数紹介されており、クマに襲われる可能性はないなどと言い切れない以上、私たちはそれらを頭に入れておく必要はあるだろう。
例えば、個人レベルでは「鈴で存在を知らせる」「誘引物を管理する」「遭遇時に適切に対処する」といった日常的な対策が基本となる。
また、同時に重要なのは、クマに対する正しい理解だ。
クマは「凶暴」でも「臆病」でもなく、学習能力が高く警戒心の強い動物である。したがって、その警戒心を維持し、人間を「怖い存在」と認識させ続けることが、人とクマの適切な距離を保つうえで不可欠なのだ。
そして、非常に大切な考え方がある。これは、本書で最も重要な部分かもしれない。クマと人間との“あり方”についてだ。
クマとどう一緒に生きていくのかという話をするときに、メディアはよく共生という言葉を使う。しかし、私は共生という言葉は使わない。共生は生態学の用語で「異なる種類の生物が相互に関わりながら同じ場所で生活すること」という意味がある。クマが好きな人々にとって、クマは大事な存在かもしれない。しかし、クマからすると人間は必要ない。これは共生ではない。だから私は共存という言葉を使うのである。(238ページより)
クマとの共存とは、仲よく暮らすことでも、放っておくことでもない。適切な距離を保ちながら、“常に対抗し続けること”なのだと著者は言う。