「世界一高い建築物」の称号を手にする超高層ビルには、30年近く前から共通点が1つある。どれも、所在地がアメリカではないことだ。
アメリカの都市の摩天楼は世界有数の認知度を誇るが、世界で最も高い建築物として知られたのは、1974年に完成したシカゴのウィリス・タワー(旧称シアーズ・タワー)が最後。同ビルは98年、マレーシアの首都クアラルンプールに誕生したペトロナス・ツインタワーに世界最高層の座を譲り渡した。
この変遷が反映しているのは、アメリカの建築能力の喪失ではない。優先事項の変化という、より深い現象だ。規制や都市の成熟度、包括的動機の変化が相まって、超高層ビルが建設される地域(と理由)が移り変わっている。
米建築事務所スキッドモア・オウィングズ&メリルが設計したウィリス・タワーは、高層建築工学の記念碑であり続けている。現時点で世界一高いブルジュ・ハリファ(アラブ首長国連邦〔UAE〕ドバイ)を手がけたのも同事務所だ。つまり、アメリカの建築家は今も各地のスカイラインを形作っているが、その場所はもはや故国でない。
アメリカでは、規制が超高層ビル建設を制限する最大の要因の1つになっている。
重要な意味を持つのが、空域安全確保のため、米連邦航空局(FAA)が定める厳格な航空規則だ。建築家で、新たな世界最高層ビルとして、サウジアラビアで2028年に竣工予定のジッダ・タワーの設計に携わったゴードン・ギルは本誌にそう語る。
FAAは一律の高さ制限を設定していないものの、200フィート(約61メートル)を超える場合は審査対象になる。現実には、特に都市の密集地域では、空港への近接度によって上限が決まることが多い。
主要空港が都市の郊外にある他国と違って、アメリカでは中心地付近に位置することも多い。建築物の高さ制限も、外国では主に地方レベルで決定されるが、アメリカでは連邦当局の管轄下にある。
規制以外に、都市計画のステージの相違という単純な事実もあると、ギルは指摘する。「私たちが手がけている(超高層ビル)プロジェクトの多くは、都市の触媒として機能するものだ。アメリカは既にその段階を過ぎている」
数十年前のアメリカでは超高層ビルが都市変革の役割を担っていた。シカゴのウィリス・タワーやジョン・ハンコック・センター(現名称875ノース・ミシガン・アベニュー)がいい例だという。
「2つの建物の誕生当時、周囲は空き地同然だった」と、ギルは話す。だが今では開発がはるかに進み、高さを誇示して成長をアピールしたり、投資を呼び込む必要はほぼなくなった。
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【note限定公開記事】なぜ「世界一高いビル」はアメリカで生まれなくなったのか
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