国際運輸労連(ITF)のアラブ世界・イラン担当ネットワークコーディネーター、モハメド・アラチェディ氏は「戦争のせいで、船員らの脆弱性と危険性は、ますます極限状態になっている」と話す。

同氏は、給与の支払遅延、船員の帰国支援の拒否といった事例や、物資不足、ミサイルやドローン攻撃への恐怖を説明した。中には、泣きながら電話をかけてきた船員もいたという。

戦闘開始以来、ITFの元には、船の放棄や給与遅延、物資不足などを巡る紛争解決に向け、援助や助言を求める船員2000人以上から連絡が入ったと同氏は述べた。

立ち往生

サウジアラビアのダンマーム港からは、沖合に約7隻の大型船が停泊しているのが見えた。平時ならば異例の多さだ。強風の中、タンカーの横では補給船が揺れ、船上の船員らは海越しに声を上げ、医療品が入った大きな袋をクレーンで巻き上げていた。

シンガポールを出港後、戦闘開始時にペルシャ湾で足止めを食った大型貨物船の船長、モヒト・コーリ氏は、最初に海峡閉鎖の可能性を耳にした時、「そんなことが起こり得るなど想像すらできなかった」と振り返る。

彼が乗るドイツ籍の船は、ダンマーム沖で安全な錨地(びょうち)を確保することができた。しかし戦闘開始から1週間が過ぎたころ、乗組員らはイランが湾岸諸国に向けて放ったミサイルやドローンを目撃し、その音を耳にするようになった。

「普段はにぎやかで陽気な乗組員たちが黙り込んでしまった。食事の時間は短くなり、会話もぎこちなくなった」。同氏はインドに帰国後、今月ロイターの取材に応じた。船主が交代要員の派遣を支援してくれたという。

しかし、ITFのアラチェディ氏によれば、多くの船員はさらに悲惨な状況に直面している。月にわずか100―200ドルの給与さえ昨年から支払われておらず、船主が帰国支援を拒否しているケースや、未払い給与を放棄する場合にのみ帰国を認めるケースもあるという。

経済やサプライチェーンの要であると同時に