「とにかく若手支援」の弊害

 シニアの方が、元気でワクワクしながら一生研究を続けてくれないと、若手も「研究を一生の仕事にしていいの?」と考えてしまうと思います。

大隅 確かにそうですね。

 なので、ぜひ先生ご自身にはこれからも、現役研究者として若手に背中を見せ続けてほしいです。それから、財団がこれまでに支援してきた人たちを見ると、若手だけでなく、わりと年配の方にも研究助成をされていますよね。

大隅 「とにかく若手支援」というのは日本のここ10年ぐらいの合言葉で、日本のサイエンスを向上させるために若い世代にお金をばらまくということが当たり前になっています。けれど、その弊害も起きています。若手を重視するあまり、40代、50代の研究費が本当に全くなくなるようなシステムになっているなど、色々な矛盾を抱えています。

若手に対しても、2、3年の間、一定のお金をあげたら、それが若手支援だということになってしまっています。若い人たちが将来の展望を持ちながら研究生活を続けられるという観点を持って助成しないから、「先が見えないから、そういう世界に飛び込めない」と、基礎科学に向かう人がどんどん減ってきています。これが現実です。

そういう意味で、本当の若手支援って何なのかっていうのをみんなで考えないといけません。

大隅良典

 うーん、やはり「シニアの研究者が背中を見せる」ことは重要な若手支援なのではないでしょうか。

大隅 そうですね、それがあってですね。だから今、シニア世代がとても疲弊していて、一部分の人しか研究費が回らず、多くの大学人が雑用に追われて一番大事な面白い時期を失ってしまっていることを危惧しています。

一流大学と呼ばれるような大学にいないと研究費がまわらないし、地方大学では「研究は趣味でやってください」「そのための研究費は自分で稼ぎなさい」と言われて格差がどんどん広がっているということもあります。

「本当の若手支援」を考える必要性

 シニア世代のそのような姿を見ていたら、若手は研究者に夢を持てなくなりますね。

大隅 シニア世代が忙殺されて、面白い研究に向かう姿を見せられなかったら、若者が「研究者になったら、所詮ああいうことになるんだ」と夢を持てなくなります。そういうことが続くと、研究者になる若者が減ってくるのも当たり前なので、何が大事な若手支援なのを本当に考えないといけない時代だと思います。

若い人たちも、3年間の研究費をもらっても、その成果を次の公募までに出さないといけないということなら、魅力を感じてくれる人はそんなにいないと思います。研究者がどういう人生をたどるかということも含めて、何か夢を持てる世の中にしないといけないと思います。

さらに、今の日本は若い人への研究費はそれなりにたくさんあるけど、40代後半から50代になったら研究支援も45歳以下という制限が多くて本当に研究費がなくなっていくということが常態化しています。

だから私たちの財団も、助成の対象になっている人の年齢は意外なほど高いんです。今の日本では、若手の研究費はなんとか色々な形で取る手立てがあります。だからこそ、そこにとどまらない支援が必要だと思います。

「文化である科学」をみんなで支える
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