独占的な運営権を付与する「特別法」を採択

新しくパイプラインを引かなくてはならないが、国営企業BH-Gasには資金を調達する力がないと言われる。

何事にも多国間の調整や合議に時間がかかるEUと異なり、アメリカ側にはスピードがあった。

ボスニアの連邦政府(FBiH)は4月、AAFSに独占的な運営権を付与する「特別法」を採択した。

この会社を率いる1人は、トランプの元弁護士のジェシー・ビナル。もう1人はジョゼフ・フリン、元国家安全保障担当補佐官のマイケル・フリンの兄弟である。

「政治とビジネスの融合」をめぐる米欧の根本的な思想差

これにEUは抵抗感を示している。

同国はEUに加盟することをずっと望んできて、2022年に正式加盟国候補となっている。EUのエネルギー市場規則では、透明性と公正な競争が必須であり、特定の事業者に独占的支配権を与えることを禁じている。

ここで浮き彫りになるのは、米欧の根本的に異なる倫理観や思想である。

ヨーロッパ人から見れば、まるで政治家が私的な利益のために国家権力を濫用しているように見えるだろう。この点、日本人と感覚が近いはずだ。

しかしアメリカの法律では、汚職の定義はかなり狭い傾向がある。裁判所も、具体的・直接的な対価交換がない限り「汚職」とはみなさない方向性がある。それに、政治家とビジネスの越境には寛容な長い伝統がある。

反対にEUは、法の支配と透明性がなければ27カ国を束ねることができない。

惨劇を繰り返したくないバルカン

さらに深刻なのは、この問題が地域の混乱や分断になりかねないという懸念である。

同国は、主に2つの主体に分かれている。

AAFSに特権を与えたのは、ボシュニャク・クロアチア系が主体であるボスニアの連邦政府のほうだ。

もう1つ、セルビア系を主体とするスルプスカ共和国がある。こちらはロシアやセルビアと協力して別のガスルートを計画している。

さらに複雑なことに、マイケル・フリンのほうは、セルビア系の主体側でロビイストをしているとEURACTIVEは報じている。フリン兄弟はボスニアでニュースになっていると聞くが、目的や戦略は何なのだろうか。

EU加盟に黄信号
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