30年にわたる予算削減の累積的影響が元凶

これに対応するのが「多層センサーネットワークによる対潜防衛」「統合防空・ミサイル防衛」「長距離精密打撃」の三本柱。イギリスが北大西洋での対ロシア作戦を維持できるかどうかは、北大西洋条約機構(NATO)全体の安全保障に直結する。

潜水艦の稼働率(英メディアによると10隻中2隻)は30年にわたる予算削減の累積的影響が元凶との見方がある。スコットランドの海軍基地では整備生産性がすでに30%向上するなど改善は進むが、新型ドレッドノート級就役までの移行期をいかに乗り切るかが課題になる。

ジェンキンス大将はイギリス主導の有志10カ国の枠組み「合同遠征軍(JEF)」を発展させた「北方諸国海軍イニシアチブ」の発足も宣言した。この4月ロンドンで開かれた北欧海軍参謀長会合で各国が署名しており、年内に正式宣言へ移行する方針だ。

欧州独自の集団防衛力強化は避けがたい課題

ノルウェーとのフリゲート共同運用協定が先行モデルで、共通艦艇による共同運用が実現すれば有人艦が補修・休養のために帰港している間も無人エスコート艦はそのまま海上に残りノルウェー艦に引き継がれる形で持続的な洋上プレゼンスを維持できる。

このイニシアチブは特定の二国間同盟の代替ではなく、欧州北西部や北極圏における集団的抑止力を生み出すために不可欠な枠組みと位置づけられる。米国の関与水準に左右されない域内防衛能力の底上げが主眼だ。欧州独自の集団防衛力強化は今や避けがたい課題だ。

イギリス社会が安全との認識は「幻想」であり、ロシアとは北方において事実上「開かれた国境」を接している。ロシアが欧州の弱点としてまずイギリスを狙いかねないとの見方もある。脅威が現実化する前に政治家、メディア、市民社会による世論形成が不可欠だ。

「軍人の思考に新たなアイデアを植えつけることより難しいことが一つある。それは古いアイデアを取り除くことだ」(軍事史家B・H・リデル=ハート)と言われる。ジェンキンス大将は「海上における戦闘は純粋な常識だ。その第一の必要条件はスピードだ」と強調する。

【動画】第一海軍卿初の公の場で、自身の海軍構想を語るジェンキンス
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