Ann Saphir
[30日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の次期議長に指名されているケビン・ウォーシュ氏は内部の意見対立を歓迎していた。しかし、それは既に着任前から起きている。
FRBは28─29日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で金利を据え置く一方、その決定は賛成8・反対4と、1992年10月6日以来、最も大きく意見が割れた。
ネイビー・フェデラル・クレジット・ユニオンのチーフエコノミスト、ヘザー・ロング氏は「FRBにおける意見相違の時代へようこそ」と語る。
「イラン戦争はFRBの職務を極めて複雑なものにしており、今後の対応について幅広い意見が存在している」と指摘。「当面、FRBは現状維持となるだろうが、今後合意形成を図ろうとするウォーシュ新FRB議長には幸運を祈るほかない」と話した。
米上院銀行委員会は29日、ウォーシュ氏のFRB議長指名を13対11で承認。本会議での指名承認採決は早ければ5月11日の週に行われる可能性があり、パウエル現議長の任期が終了する15日には就任できる見通しだ。
FRBにおける「体制転換」を約束したウォーシュ氏は、先週の指名承認公聴会で、FRBは従来のやり方に固執しすぎていると感じており、少し改革を加えたいと表明。「私は事前に準備された会議よりも、多少雑然とした会議を好む傾向がある」とし、「FRB内で健全な『家族間の争い』が行われれば、より良い決定が下せると思うし、仮にミスを犯したとしても、より早く修正できるだろう」と述べた。
29日のFOMCでは、FRBの政策当局者が声明を変更し、次の動きが利上げでも利下げでもあり得ることを示唆すべきかどうかについて、「活発な議論」(パウエル氏)が交わされた。
反対票を投じた3人(クリーブランド地区連銀のハマック総裁、ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁、ダラス地区連銀のローガン総裁)はこの変更を求めていた。パウエル氏によれば、イラン戦争に伴う原油高によるインフレ圧力を踏まえれば、他のメンバーの中にもこれを支持したかもしれない人物がいた。4人目の反対票はミラン理事で、いつものことながら政策の緩和を求めた。
結局、過半数は現行のガイダンスを維持することを決定。これは将来の政策金利の調整が利下げであることを明確に示唆するものだ。
パウエル氏は会合後の記者会見で「私を含む一部メンバーはその点について急ぐ必要はないと感じていた」と説明。「しかし、先ほど述べたように、反対側の主張もまた妥当だ。議論すべき価値が十分にある」と語った。
FOMCメンバー19人のうち変更を支持するメンバーの数が3月以降増えていることに言及した上で、「その気持ちは理解できる」とも発言。「ある時点で動き出すことになるだろうし、それは早ければ次回の会合でも起こり得る」と述べた。
<事態複雑化も>
利上げを示唆する方向へのガイダンスの変更はウォーシュ氏にとって事態を複雑にする恐れがある。
まず、トランプ米大統領は、利下げをしつこく迫ってパウエル氏への評価を落とした末にウォーシュ氏を選んだ。トランプ氏は自身の望む結果をウォーシュ氏が出すと期待していると述べているが、ウォーシュ氏自身は大統領に何も約束していないとしている。
さらに、ウォーシュ氏は自身の金利見通しを示す形であろうと、政策当局者グループとしての見通しの形であろうと、そもそも中央銀行のフォワードガイダンスに反対している。先週は議員に対し「将来の決定がどうなるかを私が事前に予告すべきだとは考えていない」と語った。
しかし、FOMC声明の作成は議長1人に委ねられているわけではなく、むしろ合意形成を通じて行われるものだ。29日の結果が示したように、時には少数派の反対を押し切って決定されることもある。
FRB内部に多様な見解が存在することは当然のこととパウエル氏は述べた。特に、昨年の関税ショックを受けてインフレ率がすでにFRBの目標である2%を上回っている現状ではなおさらで、現在の原油高がいつまで続くのか、それが消費、インフレ、経済にどのような影響を与えるのか不透明だからだ。
パウエル氏は「どの新議長も同様の状況に直面する。FOMCには18人の同僚がおり、そのうち11人が年間を通じて投票権を持つ。議長の役割はコンセンサスを形成することで、メンバーと話し、理解し、思考を把握した上で結束に導いて合意を形成し、行動に移すことだ」と語る。
同氏は在任中、圧倒的多数の会合で全会一致の支持を得ていた。「それはどのFRB議長もやらなければならないことだ。そしてケビン・ウォーシュ氏にはそれを非常にうまくこなす能力とスキルがあると思う」。