アメリカとイスラエルの合同軍事作戦に耐えたイランは、さらなる脅威に直面している。ドナルド・トランプ米大統領が命じたホルムズ海峡の「逆封鎖」だ。
戦闘開始後イランは周辺国へのドローン(無人機)・ミサイル攻撃とホルムズ海峡封鎖という非対称戦略でアメリカに圧力をかけ、最高指導者をはじめ指導者たちの暗殺にも、軍事資源の破壊にも耐えてきた。だが米中央軍はイランの港湾に出入りする船舶を対象に全面的な封鎖に踏み切ったと発表。イランが武器化したホルムズ海峡封鎖がイランに対する武器として使われている。
戦争前から経済危機が深刻化し、国民の不満が高まっていたイランに、米軍による海峡封鎖は耐え難い打撃を与えるはずだ。「消費者物価は急上昇し、年間インフレ率は3桁台に達するだろう」と、イラン経済を専門とするエコノミストのアリ・ダドペイは本誌に語った。
「輸出収入が途絶え、生活必需品の価格が急騰すれば……社会不安の抑え込みは困難になる」と、彼は指摘する。「現体制を支える経済基盤が著しく弱まる一方、支配を維持するためのコストは膨れ上がるだろう」
長年、体制の存続が懸かった戦闘に耐え、そのノウハウを蓄えてきたイランは、制裁による経済的なダメージを回避するすべも蓄積してきた。この国は「2010年以降、とりわけ過去10年……『制裁適応ツール』の構築に注力してきた」と、ブランダイス大学グローバル開発・持続可能性センターの研究者であるハディ・カハルザデは言う。「非西側諸国との貿易に力を入れ、経済の一部を多角化し、原材料の戦略的な輸入依存を減らし、食料や医薬品など主要部門の国内生産を増やし、非ドル建て金融ネットワークを構築し、影の船団を含む非公式・準公式の輸送ネットワークを拡大してきた」
カハルザデによれば、その結果「経済のさらなる軍事化と独立した民間部門の縮小」が進んだ。
この状況の最大の受益者はイラン革命防衛隊だ。名目上は体制防衛のための軍事組織だが、長年にわたり経済への影響力を拡大してきた。
一方で、ダドペイが指摘するように、経済制裁下で特権層が所有するダミー会社のネットワークも勃興した。ダドペイによれば、「アフリカから中央アジアに広がる」そのヤミ貿易網の「お気に入りの拠点はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ」だ。ヤミ貿易の収入は国庫に入ることなく、その多くは有力者の懐に収まる。ダドペイに言わせれば、これは「制裁逃れのネットワークであって、強靭な経済ではない」。