4月16日、イスラエルとレバノンの両政府が10日間の停戦に合意した。この6週間、レバノンの親イランのイスラム教シーア派組織ヒズボラに対するイスラエルの空爆により、レバノン南部で2000人以上が死亡、100万人が避難を余儀なくされていた。

【動画】イスラエルが撮影したレバノン南部の破壊の様子

今回の停戦により、イスラエルの攻撃が止まるのか、早くも疑問が持ち上がっている。イスラエルのネタニヤフ首相は、レバノン南部に一方的に設けた10キロの「安全地帯」にイスラエル軍の部隊を残す方針を表明しているのだ。

私たちは、戦争のような出来事が特定の日や年に始まり、特定の日や年に終わったものと考えたがる。歴史上の出来事に分かりやすい始まりと終わりがあると思いたいのだ。

けれども、そうした人工的な区切りが戦争の現実を反映していることはほとんどない。現実の戦争は複雑極まりなく、混沌としている。

ガザ戦争もそうだった。イスラエルと、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは、2025年10月、トランプ米政権の仲介により20項目の「ガザ和平案」に合意した。

この和平合意の内容が漠然としていて、いささか総花的で現実離れしていることは否めないが、いくつもの好ましい結果をもたらした。例えば、停戦によりイスラエルのガザへの空爆は減った。

その一方で、和平合意が負の影響をもたらした面があったことも事実だ。戦争による数々の問題が持続する環境をつくり出してしまったのだ。

和平合意が成立したことにより、世界の世論やメディアの関心は、ほかのニュースに移ってしまった。その結果、イスラエルの攻撃は毎日のように続いているのに、厳しい監視の目が向けられなくなった。ヨルダン川西岸地区でのパレスチナ人に対する暴力も激化している。

ガザへの人道支援も、和平合意で定められた水準を大きく下回ったままだ。ガザの将来の統治や開発に関する議論も進んでいない。

今回のイスラエルとレバノンの一時停戦も同様の結果を招きかねない。レバノンの民間人がこれにより一息つけるという利点はあるが、イスラエルは停戦の期間中、メディアに注視されずにレバノン南部の軍事占領をひっそり強化する可能性もある。

イスラエルのカッツ国防相は、「安全地帯」を設けるために、国境付近にあるレバノンの村の家屋を破壊し、避難した住民の帰還を阻止すると述べている。こうした措置は、停戦合意がある状況のほうが実行しやすい。

現在、世界では数十の国で武力紛争が起きている。多くの人たちはニュースを追い、戦争の動向や犠牲者の数、そして戦争終結の見通しを知ろうとしている。

しかし、アクセス数や拡散性が重んじられるオンラインコンテンツ全盛の時代には、ある戦争に対する人々の関心の度合いは必ずしも被害の大きさではなく、メディアに左右されるようになっている。デジタルメディアが普及したことにより、私たちは人々の苦しみや死の生々しい現実を知ることが可能になったが、それが継続的な関心や行動につながるとは限らないのだ。

複雑さと不安定さを増す今日の世界では、和平や停戦の意味をもっと広い視野で理解すること、そして合意成立後も監視と関心を維持し続けることを怠ってはならない。
The Conversation

Marika Sosnowski, Senior research fellow, The University of Melbourne

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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