今回の研究では、新開発の材料によって「層間亀裂の自己修復戦略」を実現した。そうした自己修復が「一般的な複合材料の設計寿命をはるかに超える規模で繰り返され、層間剥離という構造上の懸念が払拭される」としている。

新開発の材料は、見た目は標準的なFRP複合材料に似ているが、新しい特性が2つある。1つは繊維強化材料の上に3Dプリントした熱可塑性自己修復剤で、複合材料の積層板の間にパターン状の中間層を形成する。ポリEMAA(エチレンメタクリル酸)製のこの中間層は、積層板の剥離に対する耐久性を最初から2~4倍向上させ、亀裂の発生防止に効果を発揮する。

2つ目の特徴として、複合材料の内部に薄い炭素系のヒーター層を埋め込んだ。この層に電流が流れると熱を帯び、溶けたEMAA中間層が亀裂に流れ込んで、損傷した界面が再接着される。つまりこの複合材料は、最初から構造内に存在している材料によって自己修復する設計になっている。

論文筆頭筆者のジャック・トゥリチェクによると、この複合材料は一般的な材料に比べて最初から「はるかに強靱」で、亀裂に対する耐久性は、少なくとも500回のサイクルにおいて、従来の積層複合材料よりも優れていた。修復を繰り返すうちに強靱性は低下するものの、そのペースは「非常に遅い」ことが研究で判明。研究チームの推定によれば、四半期ごとの修復で約125年間、年1回の修復であれば最大で500年間、部品の機能を保つことができるとECONewsは伝えている。

現代のクリーンエネルギーや排出削減技術は軽量複合材料への依存が大きい。しかしそうした材料は修理に課題があり、リサイクルも難しいことから、修理せずに交換することも多い。

新開発の繊維複合材料を航空機や自動車、風力タービンなどに採用すれば、構造上の重要部分を繰り返し修復でき、産業廃棄物の削減や製造・廃棄される部品の削減につながる可能性がある。

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