バトゥ洞窟の階段が塗り替えられた騒動を伝える現地メディア 

The Star Online / YouTube
法律違反かどうか、という問題は別にして「周囲の景観との不釣り合い」との指摘が出ていることに関して寺院の改修委員会は「今回の塗り直しはさらに観光客を引きつけることになり、それを含めた改修は信者によりよい祈りの場を提供することになる」と説明、「世論」は意に介さない方針のようだ。

マレーシアの現地メディアによると、今回の改修には寄付を含めて約610万マレーシアリンギット(約1600万円)の経費がかかっており、階段の色塗り替えは改修委員会会長の息子が出したアイデアだったことも「世論を一顧だにしない頑なな姿勢」の背景にあるのではないかとみられている。

観光誘致のロゴマークも批判で撤回

マレーシアの観光業界を巡っては、2020年までの観光誘致キャンペーンで観光促進用の公式ロゴが批判を浴びて作り直す事態に追い込まれている。(Newsweek日本語版8月15日参考)ロゴに描かれていたマレーシアを象徴する動物であるオランウータンとデングザル、亀が揃ってサングラスをかけていたのがその批判の原因だった。

今回のバトゥ洞窟の階段塗り替えもロゴ作り直しのようにマレーシアの一般市民の視点がそもそも欠如していたことも一因となっているのではないかとの指摘もある。

しかしその一方で、バトゥ洞窟は観光地ではあるが基本的にヒンドゥー教の寺院という宗教施設であり「その改修や色塗りに関係者以外が口を挟む問題ではないのではないか」との意見があるのも事実である。

地元の「スターメトロ」の報道では、以前バトゥ洞窟をユネスコの文化遺産に登録させようという運動があったものの、「現状の建造物が周囲の環境と著しく調和していない」との理由で登録を見送られた経緯があると指摘している。

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階段の塗り替え前のバトゥ洞窟の全景。確かに寺院の施設は周囲の自然と「著しく」調和していない。(撮影筆者)

バトゥ洞窟があるセランゴール州当局も「こちらにも階段の色塗り替えの連絡は届いていない」と「階段の色」問題には関心を示しており、政府の文化財保護局とともに「今後何が必要で、何ができるのか、寺院側の説明をよく聞いたうえで、話し合いによる解決策をみつけたい」としている。

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[執筆者] 大塚智彦(ジャーナリスト) PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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