中小企業も無縁ではない
経営層が示すメッセージがいかに重要か。水口はある光景を振り返る。
世界中から2000人以上の投資家が集まった国際会議で、当時、消費財大手ユニリーバのCEOだったポール・ポールマンが、まるで環境NGOのリーダーのように、社会課題と自社の使命を熱く語った。話し終えると、会場はスタンディングオベーションに包まれたという。
「企業価値をつくるとはこういうことかと感心した。メッセージ性、発信力が違う。その点、日本企業は奥ゆかしい」
中小企業にとっても、もはや無関係ではない。SSBJ基準に沿ってサプライチェーン全体の情報を開示するには、対象となる大手1社だけでは完結しないからだ。
2次請け、3次請け、さらにその先の取引で何が起きているかまで把握する必要がある。CO2排出量だけでなく、「強制労働や児童労働が起きていないか、調査結果を見せてほしい」と取引先から言われる時代が、もうやって来ている。海外に販路を拡大しようとしているならば、なおさらだ。
逆に、開示に積極的な中小企業は、意外なほど評価される。そもそも入手できるサステナビリティ情報が乏しいだけに、先んじて動くこと自体が差別化になるのだ。
徳田によれば、自主的に開示を始めた中小企業に対し、投資家が好意的に反応する場面は少なくないという。また、SSBJ基準で自社をチェックする過程自体、ガバナンス体制やサプライチェーンのリスク管理を見直すきっかけにもなるため、経営改善のツールとして使うこともできる。