最大の評価ポイントは、国際基準との整合性だ。22年に策定が始まった当初は日本独自の規定が散見されたが、「水平比較ができないと実務で使いづらい」という投資家の声が反映され、25年3月に確定した最終版で乖離は大幅に解消された。グローバルでの企業の水平比較が可能になったということである。
では、投資家はこの情報をどう使うことになるのか。
企業価値を評価する代表的な手法の1つ、DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法においては、分母に資本コストを置き、分子に企業が将来生み出すフリーキャッシュフロー(純現金収支)の予測値を置いて、現在の企業価値を算出する。
これまでのESG情報は、分母に当たる資本コストの微調整役が主だった。「環境に配慮しているから、投資のリスクを低く評価できるだろう」という使われ方だ。
それが今後は、分子であるフリーキャッシュフローの予測精度を高めるための情報として位置付けが変わる。「この企業の5年後、10年後の売り上げやコストの前提をどう設定するのか」に直結する扱いだ。
気候変動への対応、サプライチェーンの強靭性、人的資本の充実度、ガバナンスの実効性──こうした要素が、将来の稼ぐ力を左右すると考えられている。とりわけ投資家が重視するのはガバナンスだ。責任の所在は誰にあり、取締役会でどんな議論が何回行われているのか。
つまり、投資家が見つめているのは「環境貢献のストーリー」だけではない。重要なのは、システムが適切に機能しているかどうかである。