慈善団体サルべーション・アーミー(救世軍)の政策アナリスト、アラン・ジョンソン氏は、自身が暮らす南オークランド周辺でも自動車やトレーラー、ガレージで暮らす家族が目立ち始めており、今回の公営住宅投資向け追加予算で、これが緩和できる可能性は低いと語る。

「財務大臣はこの状況を一変できると述べているが、とうていその領域には達していない」とジョンソン氏は述べた。

見捨てられた人々

6年連続の成長を遂げるニュージーランド経済は、強力な酪農セクターと躍進する観光セクター、そして移民に支えられている。

成長率が2019年に3.8%のピークに達すると財務省は予想しており、景気拡大がまだ続くと期待している。この数字は、国際通貨基金(IMF)が予想する先進諸国の成長率2%を大きく上回っている。

だが、ニュージーランドのインフラは成長に追いついていない。

同国を襲う住宅不足、交通渋滞、病院スタッフの不足を背景に、2017年の総選挙では、無敵に思えた中道右派の国民党が突如として有権者の支持を失ってしまった。

もちろん、特にここ10年間は、好景気の恩恵を受ける人々もいた。たが、それと同時に苦境に追いやられた人々も存在する。

ニュージーランドの先住民マオリ族は、同国人口の15%にすぎないが、ホームレスの3分の1を占めている。

米イェール大学によるOECDデータ分析によれば、ニュージーランドは加盟国の中で最もホームレス比率が高く、2015年には人口のほぼ1%が定住用の家屋で暮らしていない。

現状はその分析時点からさらに悪化している、とアナリストは指摘。2015年以降、政府の住宅補助の受給資格者数は倍増した。

また、賃金の上昇スピードは、過去10年間で6割増加した家賃負担に追いついていない。屋根の下で暮らすことができる国民にとってさえ、痛手を被っている状況が浮き彫りになっている。

保護施設も満員

ニュージーランドで最も人口の多いオークランドでも、ホームレスの数は史上最悪の水準にある。ここでは住宅不足も最も厳しい状況にあり、不動産調査会社クオータブル・バリューによれば、住宅価格は過去10年間で9割上昇した。

ロイターがインタビューした路上生活者の中には、オークランドを離れてウェリントンに来たという人が複数いた。

だが、圧迫は広範囲に拡大している。高級クラフトビールや熟練のコーヒーショップで有名なウェリントンは、同国内でも給与水準の高い都市だが、それでも家賃高騰の罠(わな)にはまった人は多い。

ウェリントン・ナイト・シェルターのカースティ・バギンズ氏によれば、同施設もほぼ常に満員状態だという。「ときには、ベッドと毛布を提供するのが精一杯ということもある」

(翻訳:エァクレーレン)

Jonathan Barrett and Charlotte Greenfield

[ウェリントン 21日 ロイター]

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