原料価格の高騰は、かつて市場で主流だった低純度で低価格のテキーラを製造する会社にとって、プレミアムメーカーとの競争がより困難になっていることを意味する。

「アガベには大型投資が必要で、低価格のテキーラでは割に合わない」と、CNITのルイス・ベラスコ会長は語る。

高級テキーラを生産する小規模メーカーにもその影響は及んでおり、消費者が他の酒に流れることを心配する声も上がっている。

「1キロ20ペソ超では、ウォッカやウィスキーなど他のスピリッツ類と競争するのは不可能だ」と、ハリスコ州エルアレナルにある小規模製造会社テキーラ・カスカウィンのサルバドール・ロサレスさんは言う。「このままの状態が続けば、多くのメーカーが倒産する」

CNITのデータによると、純正テキーラの米国向け輸出は、この10年で3倍近くに増加。より安価なブレンドテキーラの輸出は、わずか11%の増加だった。

同期間に、メキシコのテキーラ生産量は4%減少。特にブレンドテキーラが大きく落ち込んでいる。

世界の需要

ならず者が好み、大学生のパーティで飲まれる「ワイルドな酒」としてのイメージから脱皮し、高級酒の仲間入りを果たしたテキーラだが、この業界では、近年買収などの動きが相次いている。

世界販売量1位のラムブレンド「バカルディ」を有するバカルディは1月、高級テキーラメーカーのパトロン・スピリッツ・インターナショナルを51億ドル(約5500億円)で買収すると発表した。

2017年には、メキシコのベックマン家が、長年憶測があったホセ・クエルボの新規株式公開を行い、9億ドル以上を調達した。

また、英ディアジオは2014年、ブッシュミルズ・アイリッシュウィスキーを手放して高級テキーラ製造会社ドン・フリオを完全子会社化している。

多くのテキーラ製造会社はいま、テキーラ人気にどう歩調を合わせるかという問いに直面している。

「(テキーラの)成長に追い越されてしまった。テキーラ産業にとっては、成功がもたらした危機だ」と、パトロンの経営戦略担当者フランシスコ・ソルテロ氏は言う。パトロンでは、様々な契約を通じてアガベを購入しているという。

「想定の倍のペースで成長してしまった」

パトロンやテキーラサウザのような大量生産メーカーは、アガベの支払いに苦労しておらず、今後も在庫量は増える見通しだという。

「価値を売っている時に、コストは問題にならない」と、ソルテロ氏は言う。

ほとんどのアガベを自家栽培しているテキーラサウザでは、原料不足の問題は今後も起きない見通しだ、と同社のセルバンド・カルデロン氏は言う。

原料アガベの窃盗団も