これからは築年ではなく場所がすべて

こうした変化は日本人特有の新築信仰にも大きな影響を与えるだろう。これまでは場所よりも築年の方が価格に対する影響が大きかったが、今後は場所の寄与度が増加するだろう。不便な場所の物件価格は、新築であっても大幅に値下がりする可能性が高い。

古い物件でも利便性が高ければ価値が維持されるということなれば、中古物件のリフォームなど、住宅関連のビジネスにとっては追い風となる。これに加えて、必ずしも住宅を所有することが得策とは限らなくなるので、生涯、賃貸で通す人も増えてくる。不動産賃貸ビジネスは多様化が進むだろう。

しかも、住宅の分野は実はAIとの関連性が深い。

日本の住宅市場は、ハウス・メーカーや住設機器メーカーの影響力が強く、利用者に近い立場にいる工務店は大きな力を持っていなかった。だが、こうした重層的な産業構造もAI社会の到来によって変わろうとしている。

アマゾンは2017年9月、オフィス用品やプロ向け資材を法人に提供する「アマゾンビジネス」のサービスを国内でもスタートさせた。アマゾンビジネスはアスクルに対抗したサービスとイメージされており、実際にそうした面があるのは事実だが、同社の狙いはオフィス用品だけではない。アマゾンビジネスが最終的なターゲットにしているのは、プロ向け資材分野である可能性が高い。

不動産や住宅の分野にもAIの影響が

プロ向け資材をネット販売する企業としてはモノタロウがよく知られているが、アマゾンはモノタロウの領域を虎視眈々と狙っている。最近、アマゾンにおいて、中国企業がプロ向け資材を破格の値段で販売するケースが増えており、ジワジワと建設現場に浸透している。

この動きを加速するのが、AIスピーカーである。

グーグルホームやアマゾンのエコーといったAIスピーカーには家電を制御する機能がすでに組み込まれている。米国では、この基準に準拠した電球やコンセントなどが無数に販売されており、その気になれば、スマートホームを自由自在に設計できる。

アマゾンから資材を調達し、工務店が顧客の生活に合わせたスマートホームのリフォームを実施するという流れが見えてくる。当然、賃貸マンションといった不動産ビジネスにおいてもAIと結びついたサービスが増えてくるだろう。

現在でも、賃貸マンションのサービスの中に、ネット接続が含まれているケースがあるが、これをもう一歩進め、AIスピーカーとそれに接続された家電をセットで賃貸することも可能となる。実際、レオパレス21など一部の事業者はすでにAIスピーカーをセットにした賃貸サービスをスタートさせている。10年後、家の中には、見えない形でAIが普及しているかもしれない。

【第1回】新時代の見取り図「金融機関編」

【第2回】新時代の見取り図「小売編」

【第3回】新時代の見取り図「自動車産業編」


『ポスト新産業革命 「人口減少」×「AI」が変える経済と仕事の教科書』

 加谷珪一 著

 CCCメディアハウス

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