日本の狙いは、アメリカ側に先に根負けさせることにあった。そして43年1月のカサブランカ会談で突き付けられた無条件降伏よりも有利な和平条件を引き出したかった。45年8月初めの時点で、昭和天皇とその側近たちはまだ、形式上は中立の立場にあるソ連が、そのような和平交渉の仲介役になってくれるだろうという夢物語のような希望にしがみついていた。
「飢餓作戦」と同時進行
その先見性の重大な欠如あるいは致命的なまでの希望的観測の下、日本政府の戦略的意思決定を担っていた最高レベルの幹部の誰一人として、唯一戦争の終結を命じることができる昭和天皇に適切な助言をしていなかったようだ。本土決戦になれば大惨事だという類いの脅しは逆効果で、アメリカの攻勢を食い止めるどころか、何百万もの日本兵と民間人を無差別に殺戮するより効果的な手段の投入を促す結果になりかねない、という助言である。
こうしたなか、作戦レベルの指揮を担っていた米軍の現地司令官たちは日本に対する3発目の原子爆弾の使用を検討していたが、アメリカ政府上層部の考えは変わりつつあった。日本の指導者たちが大きな犠牲に慣れてしまっている以上、既に破壊された都市である東京をさらに攻撃し、10万人かそこらの民間人を殺害するためだけに、あの極めて高価な爆弾をもう一発投下することに戦略的価値はほとんどない。そういう考えに傾き始めていた。
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