「ALSとの生活は短距離走ではなくマラソン」

当時の楽しげな2人にはわかっていなかったことだが、現実ははるかに深刻なものだった。

「エリックは走りに行く準備をしていた」とコルタスさんは振り返る。「彼はいつもと違う、何かおかしいと感じ、調子が戻ることを期待して再び走り始めた。彼が走ることさえできずに転んでしまった時、深刻なことだと私たちは気づいた」

後でわかったことだが、エリックさんが動画の運動をできなかったのは、脚のクローヌス(筋肉が意思に反して動く現象)と痙縮(筋肉の異常な緊張状態)が原因だった。「ALSの人は反射が過敏になり、それで彼はあの『ガクガクした』動きになっていた」とコルタスさんは言う。

33歳でALSと診断されたエリックさんは、現在38歳だ。夫婦の生活は、2020年夏に撮影されたあの動画の時とはかけ離れたものになっている。

「私たちは足元をすくわれ、思い描いていた人生が崩れ去った。『あるはずだった』人生を思って嘆く時期も長かったが、今では現実の人生に感謝するようになった」とコルタスさんは言う。「進むべき道と目的を完全に変えなければならなかった。ALSとの生活は短距離走ではなくマラソンだ」

コルタスさんが言うように、ALSは「最悪のシナリオの診断」だったが、夫婦はそれに対処し、意味を見出すことができるようになった。「このような診断を受けた瞬間に人生が終わるわけではない。それはあなたの世界を揺るがしてすべてを変えるが、それでも感じる喜びや、作るべき思い出はある」

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