物体の本質は幾何学的に規定される三次元の量としての延長(空間を占めること)です。延長とは無限に分割可能な連続体です。ここでは、物体が空間を占めていますので、真空は認められません。

つまり、この世界に隙間はいっさいないということになります。精神の入る余裕はもうありません。だから、幽霊の存在などありません。こうやってデカルトは、物体から精神的要素をすべて排除して機械としての世界観を確立しました。

アリストテレス・キリスト教哲学の目的論的世界観に対して、これを機械論的世界観といいます。デカルトによれば物体の本質は延長ですから、物体はみずから運動する力をもちません。機械論的世界観は、神が最初のひと突きをしたことによってビリヤード玉が次々と運動をし始めてこの世界が動いているというようなイメージです。ビッグバンがイメージできそうな感じがします。

また、神は(永遠・不変だから)、恒常性という性質をもっています。よって物体もまた恒常性、つまり慣性をもっています。こうして世界は1度動き出したらあとは永久に運動するという「慣性の法則」が導き出されます。「私は考える、私はある」から「慣性の法則」がでてきてもよいのです(自然哲学だから)。

この後、スピノザ、ライプニッツらが合理論哲学をさらに展開させて、壮大な世界像を構築していきました


富増章成(とます・あきなり)

河合塾やその他大手予備校で「日本史」「倫理」「現代社会」などを担当。中央大学文学部哲学科卒業後、上智大学神学部に学ぶ。歴史をはじめ、哲学や宗教などのわかりにくい部分を読者の実感に寄り添った、身近な視点で解きほぐすことで定評がある。

著書に『超訳 哲学者図鑑』(かんき出版)、『読破できない難解な本がわかる本』(ダイヤモンド社)、『図解でわかる! ニーチェの考え方』『図解 世界一わかりやすい キリスト教』『誰でも簡単に幸せを感じる方法はアランの「幸福論」に書いてあった』(以上、KADOKAWA)、『日本史《伝説》になった100人』(王様文庫/三笠書房)、『オッサンになる人、ならない人』(PHP研究所)、『哲学の小径―世界は謎に満ちている! 』(講談社)、『空想哲学読本』(宝島社文庫)など多数。

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