議会と大統領の権力闘争

こうした状況の背景には、韓国政界に固有な制度的問題がある。なにしろ22年の尹政権誕生以来、韓国政府は実質的に機能を停止している。国会では、李の率いる野党が過半数を占め、尹の政策と優先課題をことごとく妨害していた。

企業に対する規制の緩和から労働法制の改革に至るまで、政権側の主要な施策はほとんど実現していない。

尹政権の現職閣僚が弾劾されるという前代未聞の事態も起きた。22年のハロウィーン前にソウルの梨泰院地区で起きた群衆の圧死事故を防げなかった責任があるとして、国会は尹の盟友である李祥敏(イ・サンミン)行政安全相を弾劾した。

後に憲法裁判所は、梨泰院事故の失態は罷免の基準である「重大な法律違反」を満たしていないと判断し、弾劾を取り消したが、これは韓国憲政史上初の閣僚弾劾であり、野党・共に民主党が議会の権限を最大限に行使する覚悟を見せつけた瞬間だった。

しかも、これで終わりではなかった。現時点までに約30件の弾劾発議が行われている。

一方で尹は、野党が支配する議会に対抗して大統領権限を積極的に行使してきた。膠着状態に直面した大統領は、自らの政策を推進し、反対派に対抗するために行政命令や検察組織に頼ることが増えた。

野党が牛耳る地方自治体には監査請求を出し、自分の政策に抵抗する労働組合には訴訟を起こした。

国民感情が揺れ動いている