ネタバレは避けてきたが、これだけは言っておこう。ラストの約15分間が本作を「実力派女優3人が主役の、非常に洗練された家族ドラマ」から「人間の死にゆく運命の意味についての洞察が、見る者に人生を価値あるものに変えたいと思わせる卓越した芸術作品」の域に高めている。

父親役のサンダースが実際に登場するのはワンシーンだけだ。しかし、このシーンが何とも素晴らしい。人間味と優しさにあふれた実に見事なモノローグで、そこから打って変わって圧巻のラストを迎える。

監督のこまやかな配慮が行き届き、おかげで正確には何が起きたのか、見終わってから繰り返し頭の中で反すうするはめになる。

サンダースは数多くの映画やテレビドラマに出演しているが舞台俳優として最も有名で、ラスト近くになって主役3人から視聴者の注目を奪うという離れ業をやってのける。

だが言うまでもなく、本作のように寛大なアンサンブルで「奪う」なんて考えるのはナンセンス。終盤にヴィンセントが登場したところで彼の娘たちの根深い対立は何も変わらない。

父親の突然の登場は「奪う」どころか、姉妹にも視聴者にも予想外の贈り物をする。『リア王』との相似は終始一貫しているわけではないが、ラスト近くでリア王がコーディリアにかける言葉は、本作の三姉妹と父親が一時的にせよようやく見いだした、互いへの優しさを言い得ている。

「おまえが私に祝福を請うなら私はひざまずこう/そしておまえに許しを請おう」

©2024 The Slate Group

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